「パラダイスへと続く道」と呼ばれたその道は今、悲惨な焼け跡へと続く道と化してしまった。
 カリフォルニア州北部ビュート郡の人口約2万6千人の小さな町パラダイスで発生した山火事「キャンプ・ファイア」は瞬く間に住宅街をのみ込み、15万エーカー以上を焼き尽くした。20日までに少なくとも79人の死亡が確認され、加州最悪の山火事となってしまった。
 パラダイスから車でわずか20分ほど北西に行った町チコに以前住んでいたことがある。近郊にいたにも関わらず、パラダイスには一度も訪れたことがなかった。しかし、多くの人から自然に恵まれ、治安も良く、のどかで美しい町と聞いていた。引退後に余生を送る場所として選ぶ人も多いとか。
 チコからパラダイスへと続く道「スカイウエー」は、美しい町へと向かう道であることから、地元の人々からは別名「パラダイス(楽園)へと続く道」と呼ばれていた。
 しかし、この山火事で事態は一変。町はあっという間に炎に包まれ、壊滅的な被害がもたらされた。山火事は早朝に発生し、極度の乾燥と強風で火の手は瞬く間に広がり、報道によると住民は避難する時間もなかったほどだったという。
 山火事を報じるニュースをみていると聞き覚えのある場所が随所に出てくる。チコの町にあるスーパーマーケットや施設がパラダイスから逃れてきた人々の避難所として活用され、憔悴しきった人々の姿が映し出される。かつては人々の笑い声で溢れていた場所が一転して、被災者の涙の場所となってしまった。
 そんな中、ボランティアにいそしむ人々の姿もある。避難してきた人々で溢れかえるチコの町ではソーシャルメディアを通して集まったシェフおよそ40〜50人が、避難してきた住民や救援活動に従事する医療関係者に1日におよそ1万食分の食事を作り提供しているという。また地元のレストランオーナーも店を休業し、タコトラックを走らせ避難所を回り手作りブリトーを配っているという。
 パラダイスへと続く道が再び「パラダイス(楽園)」に戻る日は来るのだろうか。1日も早い復興を願ってやまない。【吉田純子】

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