大和楽とは1933年(昭和8年)に実業家の大倉喜七郎男爵により創設された邦楽のジャンルのひとつ。それまでの邦楽に洋楽の要素を取り入れ、主に女性が唄い演奏することを意識して作られている。明治以来の文壇や歌壇を代表する作家の詩に三味線をのせ、ハミングや輪唱を取り入れるなどして女性が歌いやすい作りになっている。一曲が短く、踊りにもちょうど良いとされる。
大和楽がLAに紹介されて10周年の記念演奏会は実現せずに流れていたが、12年に三代目を襲名した久満の実娘、大和櫻笙が訪米し稽古をすることが決まると、歌舞伎囃子の若手ホープ堅田も演奏の依頼を快諾。昨年秋に名取となった杏笙の「ふじのかい」と大和松豊の「松豊会」、やそよの「大和楽USA」これら三派総勢50人とのコンサートが実現した。
舞台は大和久満作詞・作曲の「新さわぎ」で幕を開け、干支にちなんだ「亥年の春」が続いた。大和楽の代表作「四季の花」は三味線方14人、唄方10人、囃子2人の迫力ある演奏。松豊会の26人がそろった「娘みこし」は囃子が賑やかな祭りの曲。会場にはパワフルな空気がみなぎった。「藤むらさき」では杏笙が唄を披露。三味線は櫻笙家元とやそよ代表、箏は粟屋、蔭囃子を堅田が務めた。
司会を務めた囃子方、元米国堅田会の堅田喜久佐(ミコ・へンソンさん)は「お囃子がなかったら『気の抜けたソーダ』のよう」と例え、囃子のもたらす効果を語った。
家元は「アメリカの地で草の根運動のようにコツコツと広がってきた大和楽がこの日を迎えられたのは、みなさんの努力の賜物です」とあいさつし「(大和楽を)好きになってもらいたい。『習いたいな』と思ったらぜひ入門してください」と観客へ呼びかけた。
家元は指揮者のいない大和櫻笙演奏の 「背中で全員の気配を感じ呼吸を合わせる」難しさを説明。この「日本人の感覚」を覚えることこそ上達の鍵といえそうだ。
勉強会については「前回は日本から連れて来た人数が多かった。前と同じでは意味がないので、今回はこちらのメンバーにがんばってもらうことにした。全体で数回合わせただけだが、とても良くできたと思う」と評した。
やそよ代表は演奏会のあと安堵の表情を浮かべ「これからもLAで大和楽を続けていく努力を惜しまない」と抱負を語った。【麻生美重、写真も】