5月1日、平成が終わり年号が令和となった。平成まもなく、日本はバブルが弾けて長い経済の低迷が続き、立ち直りばなをリーマンショックで再び打ちのめされた。雲仙普賢岳の火砕流、阪神淡路大震災、東日本大震災と原発事故、熊本大地震など、数々の大災害・大不況に襲われた時代でもあった。そんな未曾有の災害に、国民一人一人に寄り添うようにして被災地を見舞い励ましてこられたのが平成の天皇皇后両陛下であった。
 「誰かが自分のことを心から思ってくれている」と感じることで人は生き続ける勇気が湧く。この多難な時代に国民に寄り添い、励ましてこられた天皇・皇后両陛下は、象徴天皇を具現化した存在であり続けた。その思いは単に日本国民だけでなく。外国訪問や慰霊の旅では、相手国の戦没者碑やその国の遺族・子供・若者などへも真情を持って接し、戦争のわだかまりを一つひとつ解きほぐしてゆかれた。常に相手の立場に立ち、心から相手を思い気遣う両陛下の言動が人の心を揺り動かしたのである。
 国事行為以外に明文化されてない「象徴天皇」の務めとは? 昭和天皇は終戦の翌年2月から、敗戦で打ちのめされ空襲で焼き尽くされた国民を慰め、奮い立たせるために『全国巡幸』を始められた。それは返還前の沖縄を除く全都道府県におよび、これが国の誇りも団結も生きる気力さえ失ってバラバラになりかけていた国民の再起を促した。『全国巡幸』は明治天皇も行われた。御所を出て天皇が初めて民衆に接し、民衆も藩主ではない天皇の存在を目にした。このように代々の天皇の全国巡幸とその折々の言動が国民の心を一つにしたのである。
 天皇の生前退位はさまざまに意見がわかれたが、近年の両陛下のご様子からも体力的に限界だった。本日即位された新天皇と皇后はまた違った時代を築かれることだろう。世の中は一瞬の遅滞もなく刻々と移り変わる。年々草木が新しい芽を出し、美しい花々を咲かせるように時代に合った皇室の変化がその動きに対応する。
 平成を国民に寄り添ってこられた両陛下に心から感謝するとともに、新しい両陛下の御代を期待を込めて言祝ぎたい。【若尾龍彦】

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