「ハーツ・オブ・ラベンダー」のメンバーとフラワーアレンジメントを披露する施設利用者の(前列左から)諸江キミさん、大村アンナさん。(後列左2人目から)共同代表のシーナ・キムさん、大波まゆみさん
 店舗で売れ残った花を元気に蘇らせ、その花を用いてお年寄りにフラワーアレンジメントを体験させ活力を取り戻してもらう。この個性的な活動を続ける「ハーツ・オブ・ラベンダー」(大波まゆみさん・シーナ・キムさん共同代表)がこのほど、正式に非営利団体(NPO)として登録しウエブサイトを開設した。 
 「ハーツ・オブ・ラベンダー」のメンバーは、ロサンゼルス近郊にある高齢者施設を毎月1回訪れる。アクティビティーの時間は30分ほどだが、花の色を見て楽しんだり匂いを嗅いだりしながら手を動かすので参加者に大好評だ。華道とは違い、形にこだわらず自由に生けられるフラワーアレンジメントの気軽さも高齢者に向いている。
施設利用者を優しく導くメンバーの優子ワーツさん
 この日はリンカーンハイツにある「敬愛ロサンゼルス・ヘルスケア・センター」を訪問。はじめて参加したという施設利用者の女性は「お花は女学校のころに少し習ったきり。きれいな花を見るのは楽しい」と笑顔。 フラワーアレンジメントは施設内で人気のアクティビティーなので「やっと順番が回ってきて参加できた」という人も。同センターのスタッフも茎を切るなどして参加者を手伝う。
 メンバーの優子ワーツさんは「細かいことは気にせず、自由に生けてもらう」という。ゆっくりと慎重な人もいればササッと仕上げてしまう人もいて個性が出る。完成したフラワーアレンジメントを各自部屋に持ち帰り、1週間ほど室内で楽しむ。「緑が部屋にあるのはうれしい」と参加者の一人。
 花は食品販売店トレーダージョーズ・サンマリノ店による寄付でまかなう。大波さんはこの店を利用しながら「大量の花が捨てられもったいない。花をレスキューしたい」と感じていた。「非営利の活動のため花を寄付してくれないか」と相談すると店長は快諾。グループが本格的に活動するきっかけとなった。
 アクティビティーの前日に売れ残りの花を持ち帰り、水切り(水の中で茎を切ることで空気が入るのを防ぎ、より多くの水を吸わせる)して元気に蘇らせ、高齢の参加者が扱いやすよう形や長さを整える。「レスキュー」された花は、バラ、デイジー、ヒマワリ、ガーベラなど種類も豊富。
 
施設スタッフに助けられバラを生ける大村さん(中央)
花や緑が心理面に与える効果について大波さんは「花の活用を6カ月間続けることにより、うつ症状が緩和され認知症の症状が軽減する。これは科学的に証明されている」という。会話しながら手先を使うことは認知症予防に直結する。視覚や嗅覚の刺激もまた然りだ。
 花による五感の刺激によって認知症ケアを行うことを目的とする「日本いけばな療法学会」が今年はじめに京都で設立され、華道の本家である日本でも花の活用が進んでいる。
ハーツ・オブ・ラベンダーのメンバーは、日系以外の高齢者施設へも慰問し、再利用した花を用いて施設利用者を楽しませる
 厚生労働省の2018年の調査結果によると、日本では500万人超が認知症と診断され、その割合は7人に1人と世界で最も高い。年齢が上がれば発症する可能性の高いこの病気に関し、9月21日を「世界アルツハイマーデー」(ADI、国際アルツハイマー病協会)と決め、世界的な規模で予防のための啓発が行われている。
 大波さんはグループについて「花が好きで、花を通して得た幸せを他の人へもペイフォワード(恩送り)しています」とし、花と高齢者の両方のためになるこの活動をともに盛り上げてくれるボランティアを募集している。詳しくはホームページを参照。
 http://www.heartsoflavender.com
【麻生美重、写真も】

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