「花は咲く」と「手のひらを太陽に」を合唱する学園の生徒と児童
 ロサンゼルス市ボイルハイツにある日本語学園協同システム羅府中央学園(村方清園長)は11月9日、創立90周年の記念昼餐会を行なった。近隣の日系団体も招待し地域の交流を深めつつ継承日本語を第一とする学園の「卒寿」を祝った。
威勢よく舞う立正佼成会の「まとい」グループ
 この日はボイルハイツから「立正佼成会」「日蓮宗米国別院」「天理教アメリカ伝道庁」「金光教」も臨席し祝いの会を盛り上げた。立正佼成会は神輿(みこし)型の「まとい」を掲げ、威勢のよい舞で開会に華を添えた。日蓮宗米国別院裏千家流茶道の大角宗孝社中は上品な和装姿で菓子や茶を進呈し参加者を和ませた。
琴や笛を奏で雅楽を披露する天理教の少年会
 羅府中央学園と道を隔てて隣接する天理教の少年会は雅楽演奏を披露。雅楽の生演奏は日本で暮らしている人でもめったに聞けない。いわんや米国においては貴重な経験と言える。古式ゆかしき装束に身を包んだ奏者たちが日本伝統の楽器を奏で始めると会場は厳かな雰囲気に包まれた。
 同学園のロバート弓削PTA会長は「コミュニティーの他の団体に一緒に祝ってもらい古い歴史を持つ者同士が交流を深める良いきっかけになれば」と笑顔を見せた。
乾杯をする(右から)福岡健二同学園理事、村方園長、田中副総領事
 金光教式のおはらい、学園の校歌斉唱などに続き、 アレン城石さんの音頭による乾杯が行われた。在ロサンゼルス日本総領事館の田中雄一郎副総領事、ロサンゼルス市のホセ・ウイザー市会議員(代読)、日本語学園協同システムの小林政子理事長らが祝辞を述べた。
 あいさつに立った村方園長は「90周年は価値あること」と節目の年を迎えた同学園に祝意を伝え「世界一の長寿国である日本の平均年齢は83・7歳。90歳である羅府中央学園はこの数字を超えたことになり、たいへんすばらしい。人間の平均寿命と異なり、創立100年を迎える学校は少なくない。羅府中央学園も100年、110年を目指してほしい」と激励した。
 昨今の米国の大学授業料の高騰や日本における外国人の受け入れ拡大に鑑み、同学園は日本語能力を向上させて日本の大学への進学を実現させる新たな取り組みを模索している。高等部では日本語能力試験や米国の大学進学適正試験(SAT)に関連してプログラム内容の変革を推進。今年は協同システムから二人が日本の大学に合格するという成果もあった。日本での進学の経験を生かして視野を広げ、国際人として成長することが日米のためになるのはもちろん、縮小が危惧される日系社会を維持するためにも、日米両語を操れる人材は地域の宝となる。村方園長は「進学の選択の幅を広げていってほしい」と保護者や子どもたちを鼓舞する。 
アルトロ・ヨシモトさん(右)から記念の盾を贈られる弓削PTA会長
 リトル東京歴史協会のマイケル岡村会長も日本の大学で学んだ自身の経験と日系4世という立場から「日本語を勉強するのは大切」と力説する。言語をなおざりにして真の文化の継承は成り立たない。
 勤続年数の長い蔡正子主任、伊沢利子教諭、今井節子教諭、城石有珠子教諭には表彰状が贈呈された。通算で24年間勤務する蔡主任は「協同システムの他の学校でも主任を務めたので今後も教師は続けるが主任の職は引退する」と自身の今後を語る。
 日本語も日本の文化も大好きという4人の子どもを持つ上村陽子さんは「歴史ある学校で学ばせることができ感謝している」。「日本語が好きという意識を持たせる。素地を作るのが親の役目」とし、それができる同学園の良さを語る。「日米両語が話せる貴重な人材に育っていけるようにバックアップしていきたい。親も負けないように頑張ります」と日本語維持に真剣な姿勢を示した。
 準備に携わった弓削会長は「90周年の祝いをするのはたいへんだと周囲から心配されたが、やらなくて後悔するよりはできる限りのことをしようと思い進めてきた」。
 参加者はみな 90年を振り返るスライドショーを楽しみ、学園の子どもたちによる「陽気ちび太鼓」に惜しみない拍手を送った。コミュニティーや後援会、かつての関係者らが一堂に会した心温まる祝賀会を終え、参加者は感慨もひとしおの様子で会場を後にした。【麻生美重、写真も】

ばちをはじき力強い音を響かせる「陽気ちび太鼓」

表彰を受けた(右から)
城石有珠子教諭、蔡正子主任、今井節子教諭、伊沢利子教諭、

 

 

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