同協会日本事務所(京都)の熊谷譲代表理事によると、ローズパレード参加は、協会設立の趣旨である慈善公演による社会的に意義ある活動が認められ2008年の初出場以来、今年で12回目。ローズパレードに加え、ディズニーランドで行進したり、ローズパレードを運営するローズ・トーナメント協会主催のバンドフェスティバルに参加するなどし、日米交流をいっそう深めた。
約20曲を披露した選曲は、加州出身のジョージ・ルーカス監督の映画スター・ウォーズのテーマ曲や当地は南米出身者が多いことからスペイン語の曲など地元に親しみのある曲を取り入れたと説明。またマイケル・ジャクソンとテイラー・スイフトの曲も用意し聴衆の心を捉えた。
筒井団長のローズパレード参加は5年ぶり2度目で、1回目は「拍手だけで終わってしまうこともある」という日本の反応と大きく異なり「あれだけ大きな歓声をもらったことはなかった。それまで十数年、吹奏楽をやってきた中で一番楽しかった」と述懐。今回のメンバーは、約100人の初参加に対し「残りの約60人は『あの感動を再び』と2、3度目の参加をしている」と語った。
パレード本番では、スタンドや沿道の鈴なりの観衆の大声援に息の合った演奏とともに、一糸乱れぬ軽快なステップを決めて応えた。筒井団長は、客の反応の大きさや広い道幅を有効に使った隊列の演奏は日本では味わうことができないといい「初めて参加したメンバーにとって、アメリカ人の大歓声を生で聞いたことが大きい。あれだけ大きな声援を聞いてみんなパワーをもらった。あの感動を日本に持ち帰って、それぞれのバンドに伝えてほしい」と願った。各所で日の丸を振った応援も見られ「私たちを待っていてもらった感じがしてとてもうれしかった」と喜んだ。憧れの大舞台はテレビで全米に中継され、後に動画をメンバーで共有し「みんがいい顔していた。アメリカのテレビに映るのも貴重な経験でいい思い出になった」と話した。
パサデナの余韻が覚めぬまま翌2日はアラタニ劇場で、今夏の東京五輪の盛り上げに一役買った。過去の東京、LAの両大会のファンファーレなど計9曲を演奏。公演は南加の森林火災復興支援を主目的にチャリティーとして行われ、地元公立高校の音楽バンドの活動支援としても寄付を参加者に募った。団員は演奏中、順に舞台を下りてホストファミリーの席へ向い謝意を表し、別れを惜しんでいた。有終の美を飾った日本選抜について、筒井団長は「小東京の劇場を借り切って、東京オリンピックの盛り上げと慈善公演を行うことができて良かった。ホストファミリーにも喜んでもらえた」と胸を張った。
熊谷代表は今遠征について「単なる海外公演ではなく、アメリカに音楽で貢献することで各メンバーの音楽性や人生の方向性が変わるほど大切」と参加の意義を強調。帰国後、日本選抜は解散するが各メンバーに対し、技術面はもとよりメンタル面などに受けたさまざまないい影響を維持し「『人をより楽しませる音楽に変わった』と誉められるようになってもらいたい」と期待を寄せた。08年から継続する日米交流については「助け合いの精神を共有しながら親交を深めている」と力を込める。11年の東日本大震災の際には、お返しとして米側が義援金の呼びかけや慈善公演を開くなど被災地の復興を支援してもらい「とてもありがたく、感動した」と述べ、音楽の力を感じたという。米遠征の継続は「メンバーのモチベーションが上がり、人生観が変わるなど日本では経験できないことができるので、毎年参加して交流の根を育てていきたい」と意欲を示した。【永田潤】