腎臓患者や患者の家族が感染
不安抱える看護師の塩谷さん
パラマウントにある透析センター。新型コロナウイルスの感染者を治療する病院ではないが、この施設で看護師として働く塩谷郁(あや)さんは、「私たちの現場も新型コロナウイルスと闘っている」という。
透析が必要な患者には腎臓疾患があり、疾患は糖尿病などからきている場合もある。つまり基礎疾患があり感染で重症となるリスクが高いといわれる人々だ。塩谷さんの透析センターには患者が週3回、朝は早ければ午前4時から定期的に訪れて、椅子に座って3〜4時間の透析を受ける。患者は透析に通うことをやめるわけにはいかない。外出禁止命令が出た今も通院は対象外となっている項目の一つである。
だが、最近になって患者や患者の家族にウイルス陽性と分かった人が数人出て、職員にも患者にも不安が渦巻いているという。
塩谷さんの勤務先は今年の1月に開院したばかりで最新の設備が揃い、広々とし、患者同士の席も十分に空けている。新型コロナウイルスの患者が入院する病院でさえ不足しているN95マスク(米労働安全衛生研究所規格に合格した微粒子用マスク)は、塩谷さんの職場のようなタイプの医療現場では全く手に入らず、従来通りサージカルマスクを使っている。もともと血液を扱うのでフェースシールドは使用しているし、透析センターはインフェクションコントロールが大切なので、常日頃から感染防止は徹底している。それでも足りないところがあったのか。患者自身も気をつけているはずだが、メディカルトランスポーテーションを利用もするし、帰りがけに食料品の買い物に寄り道をするかもしれない。感染経路が特定できないので、万が一同院からだったら? と神経質にならざるを得ない状況だそうだ
外出禁止命令で人々が自宅にいるときに、患者は週に3回通院する。これは、普通より格段の感染リスクがあるといえる。感染を診断されたあとは、患者はERで透析を受けているが、発症までの期間に無自覚のまま来院していた可能性は否めない。「今後どうしたら」という不安、「そして、私も?」という不安に陥ったという。ウイルスが目に見えないだけに厄介だ。
塩谷さんは、「感謝していると言ってもらえるのはうれしいが、実際は『あの人はCOVID・19と関わっている』と知ると怯えた目で見られる場合がある」、と話す。「私は、自分の意志でメディカルの分野で働いているから耐えられるが、そのことで家族が差別を受けたり、きつい言葉を投げ掛けられたらかわいそう」、と家族を気づかう。また、「私たちはまだ間接的だが、COVID・19の患者さんを直接看護する現場にはN95マスクはあるべきだ」と憂慮した。
揺れる治療従事者
立ち上がったナース
サンタモニカにあるUCLAメディカルセンターでは看護師が「対新型コロナウイルス感染患者時の安全策」「規定に沿ったスタッフの配置率」「感染流行の期間中のすべての医療スタッフの正規雇用」を求めて立ち上がった。
最近、新型コロナ感染の第一線の医療現場に関して、医療従事者の不休の献身を伝える一方で、N95マスクの不足など必要なPPE(Personal Protect Equipment)が得られない状況下で、職場放棄や、ある病院では新型コロナ患者の病室に通常マスクで入室することを拒む医療従事者が出てきているとメディアは報じている。
看護師の労働ユニオンであるカリフォルニア看護師協会と全米看護師組織委員会 (CNA/NNOC)は協会の支部のある18州の知事と病院宛に、新型コロナウイルス感染者と感染が疑われる患者に接する看護師に必要なマスクや手袋などの防護用品の供給に加え、一時滞在用の住居、チャイルドケア、労災保険の適用などを含む措置をとるよう訴えた。医療従事者が家族を守るための対策が必要だという。家族に感染させないように、自宅に戻っても車庫で眠ったりする事例、雇い主から、自分の感染が疑われた時に有給休暇を使って自宅待機するように言われる事例などがあるという。
青色照明で感謝伝える
心を一つに全米で毎木曜
英国で始まった運動は、医療現場などの第一線だけでなく、私たちの基本生活を支える食料品など、すべてのエッセンシャル・ビジネスの人々に感謝を表するものだ。ロサンゼルスのほか、ニューヨークやシカゴなど全米の各都市で行われた。不安や心配が渦巻く中で、全米の心を一つにするキャンペーンとして、毎週木曜日に継続し、運動の広まりが望まれている。