店舗の上のアパートの住人が録画した動画を見せてくれた。マスクをつけた4、5人の若者が、ガラス張りの店を目掛けてがれきや石を投げ付ける様子が映っていた。 驚いたことに、客として店を利用していたアパートの住人の姿もあった。撮影者が発したのか「ノー! 」という叫び声が響き渡る。「皆、石を投げながら『これは自分たちのレボルーションだ』と言っていた。何かに対して怒りを抱いていた様子だった」
散乱したガラスの破片を渡辺さん渡辺さんが片付けるその横で、別の若者がやって来てヘラヘラと笑いながら無差別的に物を投げたりスプレーで落書きをしたり悪行を続けた。怒りで震えながら「やめて! あっちへ行って! 」と追い払い続けたが、人種も性別も入り交じった複数の若者は引き下がりもせず全く意に介さない。中には手が血だらけになった者、酒の瓶を握っている者、何かしようと隙を狙っている者もいる。アドレナリンが出ていたのか不思議と恐怖は感じなかった。「助けを呼ぼうにも真夜中で呼べない。自分の店は自分で守る」と必死だった。
被害から2日たち、起きたことに対し怒りを感じる一方で、「こうなるには理由があった」とも思う。「Covid19が始まってからこの3カ月、お金もなく学校へも行かなくなった若者が増えた。彼らの不満が募っていたことはすごく分かる。その集団が共感し団結して抗議運動に便乗した結果起きたことだと感じている」
20歳で単身渡米し10年後に店を開いた。それから11年、数々の困難を経験してきた。昨年末には従業員の1人が3年に渡り金を盗んでいたことが判明。新型コロナ、そして今回の被害と不運は続いた。
「ショックは大きいけれど、それを受け止めて進むしかない。怒っても被害者になって泣いていても仕方がない。ムーブオンしなければ」。渡辺さんは自らを奮い立たせるように力を込めた。【麻生美重】