自然災害の専門家を迎えて行われたウェビナー会議。鵜浦代表(下段左)や海部ジャパンハウス館長(同右)が参加し活発な意見が交わされた
 2011年3月11日に起こった東日本大震災と、その他の自然災害から得た教訓を基に、自然災害の専門家を迎えて自然災害への備えと対処方法などを共有するウェビナー会議が10日、東北地方太平洋岸沖を震源地とする大地震発生の同日に合わせて行われた。会議後はプログラムの2部として追悼集会をオンラインで配信した。ビデオメッセージや祈り、音楽、パフォーマンス、キャンドルルライトを犠牲者にささげ、復興を祈念した。 

 これまでは非営利団体「LOVE TO NIPPON PROJECT(鵜浦真紗子代表)」が、震災以降、多数のボランティア市民はじめ各種団体の協力を得ながら東日本大震災追悼集会を主催してきた。一昨年まで、毎年3月にロサンゼルス市警察本部で開催したが、昨年は新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされた。震災10年の節目の今年、会合はウェビナー会議となり、ジャパンハウス(海部優子館長)と共催した。ジャパンハウスとの共催により、オンラインという画期的な技術を駆使し、その利点を生かし世界に向けて発信、日英同時通訳付きの国際会議となった。
 パネリストにはカリフォルニア州危機管理センターなど、自然災害に関わる政府機関や自然災害の専門家が次々に登壇した。多くの日系団体、日米政府機関が協力し、米国内の震災関連では最大規模のウェビナーとなった。
 参加者一同による祈りの後、岩手県大船渡市に帰郷中、宮城県気仙沼で被災し、大津波に襲われながらも首尾よく逃れ、九死に一生を得た鵜浦代表の被災体験の一部を紹介した。ロサンゼルス郡消防本部特殊部隊のラリー・コリンズ大隊長が当時の大船渡市内での捜索活動を振り返った。被災地の岩手県大船渡市からは、戸田公明市長がインフラ整備状況をはじめ復興状況を報告。そして、自然災害の分野で米国トップの科学者ルーシー・ジョンズ博士が、米国西海岸と日本の災害の違いを明確に解説した。郡消防本部からは他に、ダレル・オスビー本部長らが出席した。

隊員を率いて地震発生から48時間以内でに被災地入りしたラリー・コリンズ大隊長。当時の写真を写し、懸命の捜索を振り返った
 消防関係者や自然災害の第一人者が勢ぞろいし、カリフォルニアで必要な災害対処方法が説明されるなど、貴重なプレゼンテーションとパネルディスカッションが展開された。自然災害に関する重要な資料も提供された。
 鵜浦代表は「海外で最大規模の日系人社会を持つロサンゼルスから東北にエールを送る機会となり、コロナ禍という特殊な環境下で、しかも一人一人が危機意識が高い中で、初となるジャパンハウスとの共催で、追悼関連会合が開催できた。夜の追悼集会は手作りの心温まる復興祈念の企画で、こちらも非常に感動した」と強調した。
 ロサンゼルス郡消防本部特殊部隊は、地震発生からわずか48時間以内に岩手県大船渡市に派遣されていた。鵜浦代表は、生存者の捜索にあたったコリンズ大隊長と震災翌月、サンタモニカで行われた会合で運命的な出会いを果たし、団体設立のきっかけとなった。また、会合に一緒に参加し、震災直後から復興支援を行っていた南加日米協会の当時の会長ダグ・アーバー氏に背中を押され、団体設立を決心したという。
 会議の進行役は、震災発生後いち早く現地入りして取材し、被災状況を全米に伝えたABCニュースのアンカー、デビッド・オノ氏が務めた。オノ氏が翌年2月に被災地を再訪した時は、鵜浦代表が大船渡と陸前高田市周辺、自身が被災した気仙沼を案内し、被災地のテレビ取材にも同行した。その1カ月後に第1回追悼集会を開催した。
 今年の会議は同夜7時以降、ABCニュースのウェブサイトでも同時配信され、一般米国人にも広く周知された。ウェビナーの様子は、提供された貴重な情報も併せて、同団体のウェブサイト(lovetonippon.org)で15日から配信される予定。
 鵜浦代表は、震災から10年という節目の開催について、背景には10年間におよぶさまざまな貴重な絆の積み重ねや、被災に関する記録や事実があると説き、「そのことをイベント参加者が共有できたことが非常に意義深い。私1人の壮絶な被災体験が根底にありながらも、その後の偶然の出会いや縁、そして日米交流で広がった一つ一つの絆を通して、一輪のささやかな花から大輪となりつつある。ボランティアに支えられ10年も継続する草の根的な団体であり、皆が主人公で今日に至っている」と語った。
草の根運動を展開し被災地支援を継続するLOVE TO NIPPONのメンバー。左から2人目が鵜浦真紗子代表

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