あまり聞き慣れない名称だが指のけんしょう炎で関節がスムーズに曲げられず、まっすぐか曲がった状態のどちらかでしか止められなくなる状態の指だ。ちょうど壁に付けられた電気のスイッチのように「入」か「切」の状態になってしまう。曲げる際にカックンとなって曲がるためバネ指と呼ばれる。放っておくと固定されてしまうらしい。拳銃の引き金に掛けた指の形状のようになるため、英語ではトリガーフィンガーと呼ばれている。
指関節の使い過ぎにより起こる場合が多いがホルモンのアンバランスでもなり、妊娠中、出産後、また更年期の女性に発症するケースが多い。男性もリウマチや糖尿病、透析患者に起こりやすい。スマートフォンを片手で操作する人、コンピューターのキーボードやマウスの操作、スポーツが原因になることもある。
思い当たる節がなかったが、ある朝起きたら左手の親指がバネ指になっていた。糖質制限が功を得ているが糖質が原因だろうか。2週間くらいたって痛みも少し出てきた。さらに親指から腕の内側を伝って脇の下まで、軽く腫れているような倦怠(けんたい)感もあった。
主治医の指示で専門医に診てもらった。事前に調べるとほとんどの治療が薬の服用か注射、またはその併用、もしくは手術となっている情報ばかりだったが、数回通って、マッサージ、電磁波やウルトラサウンドによる治療、足かせならぬ指かせのようなゴムバンドを使った屈指体操や、粘土状のものを使いボールを作りそれを握ったりつぶしたり、直径3センチほどの棒状のゴムを両手で握りねじるなど、数種類の運動を繰り返す。合間に温・寒湿布も受ける。注射や薬,手術はなるべく避けたいので、こうした治療はうれしい。幸いにも6回ほど通院した頃から改善が見られた。
今回の治療で気が付いたことは、屈伸など痛みを感じる一歩手前で止め、無理強いはしないこと。同じ行程を繰り返すうちに許容範囲が少しずつ広がり、元の状態に近づき、痛みも軽減された。人間の体も機械や道具などと共通する部分がある。使い過ぎても使わずに放って置いておいてもダメ。
治療、リハビリを続けることひと月半ほどで指は99%元通りになった。【清水一路】磁針