日本では毎朝4時からマスターズでの松山の快進撃を伝えていた。
第1日目3アンダー、第2日目4アンダー、第3日目は驚異的なスコア65で7アンダー、2位に4打差の11アンダーである。時差の関係で最終日は月曜日の早朝からテレビをつける。3日目のようにスコアは伸びず一進一退。最終18ホールを2位に2打差で迎えた。ティーショットは狙い通り、狭い両側の林を抜けて最後はフェードがかかりバンカーの右フェアウェイへ。ここで優勝を確信した。ところが第2打をなんとグリーンの右バンカーへ打ち込んだ。緊張のあまりか、普段の松山にはこの距離で考えられない。第3打でバンカーから出しパターで30センチに寄せ、これを沈めてボギー。マスターズ戦で日本人初のビッグ・メジャーのチャンピオン誕生である。
松山英樹は愛媛県松山市出身。東北福祉大卒。2008年全国高校選手権優勝。11年マスターズで27位となり、日本人選手初のベストアマチュア賞を獲得した。この年はあの東日本大震災があり、松山の活躍は被災者の大きな励ましにもなった。11年11月には日本ツアー史上3人目のアマ優勝。13年4月にプロ転向し、史上初のルーキーでの賞金王に輝いた。翌14年から米ツアーに主な舞台を移し、14年6月に初優勝。ここまで日本男子最多の通算5勝を挙げていた。今回の優勝はマスターズ初出場から10年目の快挙である。
優勝スピーチではクラブ側からの通訳がついた。スピーチでは恒例の運営関係者や観客への感謝は述べられず、通訳に促される始末。プロゴルファーはファンや運営者・ボランティア・スタッフなどへの感謝があってこそ業界の繁栄に貢献できる。これからも各種トーナメントで優勝するだろうが、一流プレーヤーとなった松山は社会の動きにも気を配り、これらを身につけねばならない。
いずれにしてもこの快挙は、体幹がしっかりしていて外国選手に劣らない松山でないとできなかっただろう。これからますます精進してゴルフ界を背負う立派なプロゴルファーになってほしい。テニスの大坂なおみ選手がお手本である。【若尾龍彦】