「奈良にとって音楽との関係、すなわちレコードのジャケットアートとの関係が、美術史や芸術への道標となっている。その情熱を、来館者は奈良のレコードコレクションコーナーからも伺い知ることができるはずだ。また、本展では100点以上の作品を展示して、奈良の作品に対する概念的なプロセスに光を当てている」と吉竹氏は説明している。
奈良と言えば、鋭いまなざしとどこか不気味な雰囲気を漂わせる人物のポートレートが有名だろう。彼の作品には、幼少期の記憶や音楽、文学、ドイ
同展では、ウィルシャー大通り沿いの街頭に設置された約8メートルの、白色に塗装されたブロンズ彫刻「Miss Forest」(20年)や、「核反対」のプラカードを持つ厳しい表情のツインテールの少女を描いた「No Nukes」(98年)など話題の作品が数多く展示されている。中でも「No Nukes」は、東日本大震災後、12年7月に、福井県にある二つの原子力発電所の再稼働を決定した政府に対して10万人もの人々が集まった際、多くの人が、奈良が無償でダウンロードを許可した「No Nukes Girl」と名付けられたこの絵をプラカードとして持っていたことでも話題となった。
奈良美智展は7月5日まで開催され、展示場は「BCAM(The Broad Contemporary Art Museum)レベル2」。ロサンゼルス郡在住者は、平日午後3時以降の入館が無料。LACMAでの開催後、上海のユズ・ミュージアムなど他の美術館を国際的に巡回する予定となっている。
ウェブサイト—
lacma.org
奈良美智 1959年生まれ。青森県弘前市で育つ。87年に愛知県立芸術大学で修士号を取得後、93年にドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーに留学。90年代半ばから、ヨーロッパ、アメリカ、日本、アジア全域で幅広く作品を発表している。2000年に帰国。ペインティングを中心に、ドローイングやセラミック、ブロンズなどを使った彫刻、廃材を利用したインスタレーション、また日常の風景や旅先での出会いを記録した写真も制作している。
【砂岡泉】