5月末から6月にかけては、巣立ちのときだ。
 日系2世ビジネスマンが集って57年前に発足したシアトルファーストヒルライオンズクラブでは、卒業予定の市内の高校生に毎年、奨学金を贈っている。
 今年も先週、選ばれた5人の高校生に昼食会で1000ドルずつが手渡された。
 「秋からは子供が3人も大学に在籍することになるので家計は大変厳しく、この奨学金は助けになります」と喜びを語ったのは、日系4世受賞者の父親。他方、受賞者の1人でエチオピアから移民してきた高校生は、過去3年間、働きつつ自力で高校生活の修了にこぎつけたという。かつて多数の日系1世も同じように苦労しつつ道を切り拓いていったのだろうと、そんな思いで拍手を送った。
 その翌日、大学の卒業式に出席のため、久しぶりに北カリフォルニアを訪れた。町なかにはジャスミンの甘い香りが漂い、抜けるような青い空が広がっている。例年になく低温の続くシアトルから到着した私たち夫婦には、快い温かさが何とも言えず嬉しく、あらためてカリフォルニアの魅力を実感させられた。
 日頃は若者であふれる大学町のあちこちに、両親や祖父母とおぼしき人々の散策する姿が多く見られ、ホテルの朝食会場では「おめでとう」「おたくは何学部をご卒業?」「うちの孫は…」と見知らぬ同士で話が弾んでいた。
 今年卒業を迎えたわが子は、自分の進む道を捜し求めてピースコアボランティアとして海外に赴くなど、ここに至るまでに随分と時間がかかった。「今から始まる長い学校生活のスタートだから」と幼稚園入園を祝った日から数えてみると、何と23年もの在学生活。それも、「お父さんお母さん、はるばる卒業式に来てくれてありがとう」という言葉と共にピリオドが打たれた。
 恒例の羅府新報の卒業特集は、今月末。さまざまな感慨をもたらす紙面の制作が今、急ピッチで進んでいることだろう。卒業生とご家族の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」【楠瀬明子】

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