偽装家族ながら幸せな生活を送るアーニャ(左)たち

 日本国内外で大ヒットを記録し、数々の賞を受賞した漫画「SPY×FAMILY」(スパイファミリー)」。テレビアニメだけでなくミュージカル版も上演され、各社とのコラボレーションでも引っ張りだこの同シリーズの劇場用オリジナル映画となる本作「SPY×FAMILY Code:White」は、原作者の遠藤達哉が監修・キャラクターデザイン原案を手がけている。
 舞台は東西の緊迫と熾烈(しれつ)な情報戦が繰り広げられる架空の世界。スパイや殺し屋が暗躍するハードボイルドな物語かと思いきや、彼らが構成する偽装家族が真の家族としての絆を築くストーリーになっている。主人公のスパイ、黄昏(たそがれ)が任務のために養女にした少女アーニャは、心を読むことができる能力を持っており、それが危機を救うこともあれば、とんでもない大騒動を巻き起こしてしまうこともある(後者の方が多いかも…?)。
 本作でも心を読んだがために、機密の入ったチョコレートを飲み込んでしまったことから、家族を巻き込む騒動になる。

子どもゆえにハチャメチャな行動をするアーニャ

 近年、日本のアニメーション界は国際映画賞をにぎわすような作品を続々と制作しているが、「SPY×FAMILY」シリーズはそうした流れとは一線を画す、コメディー色の強い作品。シリアスかと思うとハチャメチャな展開になったり、子どもにありがちな下ネタに流れていったりし、「クレヨンしんちゃん」をほうふつとさせる。子どもや孫と一緒に見に行くと、笑いとドキドキの共有体験が堪能できるようになっている。
 本作で爆笑したのが「うんこの神様」のシーン。アーニャがトイレに行くのを我慢している時に展開するシーンで、コミカルな要素が前面に押し出され、絵のタッチもパステルでメルヘンな雰囲気になり、「幻想的な」うんこの神様のめくるめく世界に目を奪われる。「うんこの神様」は仙人のような様相で登場しアーニャを導くのだが、果たしてこのギャグがキリスト教などの一神教で育った西洋人にはどう映るのだろう。神道の文化で育った日本人は、八百万の神々の存在が当たり前。それゆえ、うんこの神様がいてもおかしくないと思い、すんなり受け入れられる。しかし、一神教で育った人たちにとって、うんこの神様という存在は理解の枠を超えたものになるのではないだろうか。
 「仙人のような様相」と書いたが、あのルックスを見て「仙人」を連想できる人はどれだけいるのだろう。仙人とは中国の道教で考えられている伝説の人物。通常、頭のはげた男性の老人で、白いひげが特徴で杖を持っている。一目見ただけで、日本人はそのキャラクターが導師的な存在だとピンとくるが、西洋人は「この老人は何なのだ?」と思うのではないだろうか。本作は、米国育ちの子どもたちにそうした日本の伝統文化を伝えるきっかけになる映画とも言えよう。
 SPY X FAMILY Code:White 任務遂行のために孤児アーニャを養女にし、公務員の傍ら殺し屋をする女性ヨルに妻役を申し出て偽装家族となった凄腕スパイ、黄昏(たそがれ)は、仕事の成果を出すために、家族旅行に出かけるのだが…。
(はせがわいずみ)

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