米国の大学・大学院で学ぶ日本人留学生の数が近年、激減しているという。前年比で14.3%減で、上位を占める発展途上国などが増加している中、日本は10年で半減してしまっている。この傾向が、日系社会にも悪影響を与えると見る私は、気になってしょうがない。
 私の渡米目的もやはり留学だった。15、16年前のその頃は、現在最多の中国人留学生はごく少数で、当時首位の日本と韓国が圧倒的多数を占め、語学学校ではそれぞれの母国語を人目もはばからず堂々と話し、英語上達の妨げになった。かつての「栄華」が懐かしい。
 留学生の減少は、少子化がその一因であるとことは間違いないと思うが、近年指摘される若者の内向き志向が、留学を思い立たない根底にあるらしい。減少の一途をたどる半面、遊び目的は減った感じがし、真剣に勉学に打ち込む日本人生徒が目立つのがうれしい。これら勤勉学生は、忙しい学業の合間を縫って東日本大震災の募金運動に励んでくれ、頭が下がった。
 農業移民が最初に作った日系社会。写真結婚、呼び寄せなどで家族を増やし、今の礎となる原形を築いてくれた。だが、米政府による移民制限の政策と、戦後は日本の産業近代化により入植者は途絶え、戦後渡米した新一世と呼ばれる新参者と帰米二世が、日本語で会話するわれわれの社会を形成している。そして、母国に倣ってはいけないことだが、高齢化問題を抱えているのが現状だ。
 駐在員や留学生が、各人の任期、卒業後も帰国せずに住み続ける新一世。長引く不況の影響で駐在者の増加が望めない中で、次世代を背負って立つのは留学生が居残っての永住に嘱望するしかないだろう。
 本国からどんどん渡米者がやってくる中・韓など各国系社会と比較すると、日系は人口、経済力、町の大きさ、米国社会への影響力などで劣り、格差は開くばかりで引け目を感じることも多い。
 日本の少子化は、日系社会の留学生の少なさに置き換えて考えてもいい。学業を終えアメリカで働く意欲がある貴重な若い日本人がいてもビザなど就労問題で帰国を余儀なくされることもあり、もったいない。【永田 潤】

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