少し前の日本の子どもたちは、夕ご飯の惣菜の買い足しなど「お使い」をよく頼まれたものだ。買い物かごを下げて近くの商店街に行く。注文すると、店の人は品物を新聞紙などにクルクルと手早く包んで、かごに入れてくれた。
 にぎやかだったその商店街も、信じたくない現象だが、いまではほとんどの店がシャッターを下ろしたまま、閑古鳥が鳴いているところが多い。大型スーパーや量販店、ショッピングセンターが近郊に出現すると、モータリゼーションの進展とともに顧客離れが進み、昔ながらの家族経営ではとても太刀打ちできないという。
 「シャッター商店街」は寂しい現実だが、人々の生活スタイルも変化し、古ぼけた買い物かごなど下げてショッピングしている人など、まず見かけない。ちょっと気の利いた買い物なら、しゃれた店のロゴ入り手提げバッグに購入品は収められ、グロッサリーや日常品ならプラスチックバッグが普通に利用されている。
 いずれのバッグも無料で提供されているとはいえ、店はただでバッグを揃えているわけではない。その仕入れ経費はしっかりと商品価格に上乗せされているのだが、消費者はあまり意に介さない。
 グロッサリー店などでプラスチックバッグが多用されるようになったのは20年ほど前から。その使用量はロサンゼルス市の場合、市内全域で年間最大23億枚との見積もり。以前の紙袋より単価が安いことでプラスチックバッグが全盛となり、その弊害も今や顕著に。
 海、山、川、公園などに捨てられるプラスチックバッグの量は半端でなく、環境汚染が著しく進んでいる。再利用しないプラスチックバッグの禁止を決めている都市も増え、南カリフォルニアではロングビーチ、サンタバーバラ、カラバサス、サンタモニカ、マリブ、マンハッタンビーチなどで順次、施行されている。
 2010年までに州レベルで禁止されない場合、市独自で禁止できる選択肢を採用していたロサンゼルスでは今、決定を市議会に一任するか、住民投票で決着させるか、賛否をめぐり駆け引きが続いている最中。いずれ「買い物かご」の再登場、という可能性は高い。【石原 嵩】

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