小さな座布団を二つに折ったような防災頭巾を、戦時下の日本を紹介する写真などで見たことはおありだろう。自分で作った経験をお持ちの読者さえ居られるかもしれない。当時は防空頭巾と言っただろうか、たいがいは地味な色合いの木綿布の綿入れ頭巾だ。
 ところが滞在中の日本でこのほど、もうずっと昔のものだと思っていた防災頭巾を、ご近所の人たちと一緒に作ることになった。
 最初は、ヘルメットならともかく、防災頭巾とは何と前時代的なと思えたのだが、説明を聞くうちになるほどと講習に参加することにした。何しろこの防災頭巾、いざという時に必要なものが中から出てくる、まるで魔法のポケットのような頭巾だったから。
 準備するのは、バスタオル1枚、フェイスタオル1枚、布テープ1・5メートル、紙オムツのライナー2枚。そして、非常時に役立つと思われる物、連絡先、大事な証書の写しなど。
 まず、大小2枚のタオルの中央を合わせた後、フェイスタオルを一方に寄せてバスタオルと縁を重ねる。重ねたタオルの中央から左右へそれぞれ10センチメートルのところをしつけ糸で縫い合わせ、次にその横12センチメートル、そして同じく10センチメートルを縫い合わせると、計5つのポケットが出来る。中央の広いポケットに紙おむつ用ライナー2枚を入れて頭の保護材に利用。残りの4つのポケットには、なるべく均等な厚さになるように注意しつつ、持ち出し用に準備した物を差し込む。バスタオルを半分の幅に折ってポケットを覆い、縁をざっと縫って閉じる。次いでその丈を半分に折って一方を綴じ合わせ、テープを縫いつければ防災頭巾の出来上がり。糸を切れば、タオルをはじめ、役に立つものばかりに分解される仕組みだ。
 軍手、電話用の小銭、ファーストエイド、下着、カイロ、保険証の写し、緊急連絡先、薬、マスク…中に入れるものは多種多様。カラフルなバスタオルで、花の咲いたような教室となった。
 新聞に連日、首都直下型大地震に関連した記事を見る日本なのだ。【楠瀬明子】

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