昨年10月から続いているSoCalGasのガス漏出事故で、多くの住民が健康被害を訴える中、住民を守るため立ち上がったひとりの日系女性がいる。日比野恭子さんは2014年から同施設内で行われている事業に疑問を抱き、同年4月に環境災害への問題提起と住民との知識共有を目的にパートナーであるマット・パクーコさんとともにNPO「Save Porter Ranch」を立ち上げた。間もなくしてガス漏出事故が発生。事態は10年に起こった英石油大手BP社のメキシコ湾原油流出事故以来、最悪の環境災害にまで発展した。現在、住民らをとりまとめ、弁護団や環境問題の専門家らとともに事態の改善に向けて活動する日比野さんに話を聞いた。【取材=吉田純子、写真も】
日比野さんは米国生まれ日本育ちの日系女性で、米在住およそ20年になる。ポーターランチに引っ越してきたのは07年。住み始めた当初からSave Porter Ranchを立ち上げるまで、この地にガス施設が存在することすら知らなかったという。実際、施設内でガスを貯蔵している井戸は小高い丘の裏側にあり、住民が住むエリアからは見えない。30年以上前から住む住民ですら、施設の存在に気付かなかったという人もいるほどだ。
「ポーターランチは空気がきれいで自然にも恵まれた素晴らしい環境。私はその環境を信じて引っ越してきました。まさかガス貯蔵施設があるなんて思いもよりませんでした」。郊外のポーターランチには高級な新興住宅が建ち並び、同じような思いを抱いて家を購入した住民が多いという。
ある時、自宅周辺で採掘工事が行われているという話が近隣住民たちの間で持ち上がった。ミーティングが開催されるというので行ってみると、会場には全米規模で環境保護を目的に活動するNPO「Food & Water Watch」のメンバーの姿があった。彼らは施設内で行われている事業について調査していた。「何かまずいことが行われているのかもしれない」。疑念が頭をよぎった。ミーティング後、日比野さんはSave Porter Ranchを立ち上げ、住民らとともに本格的に実態の究明に乗り出した。(続く)