ハーバード大学で75年以上にわたり、同じ人物の人生感を探る研究が行われており、その過程で分かったことがあります。
 若い頃には富や名声を目標にしてそれが幸せにつながると考える人が多いのですが、幸せ感をより強く持つのは、良好な人とのつながりなのだそうです。友人の数や既婚か未婚かということよりも、身近な温かい人間関係が脳を守り、老化を防止し、健康で長寿につながっていく傾向があります。一方で孤独感が強い人は脳機能が低下しやすく、寿命が短くなる傾向があるのだそうです。
 ですが、シニアの方と接する機会があると、「今後の生活は世の中に迷惑をかけずに過ごしていきたい」と話す方が多いことに気づきます。年金などで暮らす期間が長くなるほど、自分が生きていることが世間に迷惑をかけていると感じるようになるのでしょうか。
 先日、両親と話した時にも違和感を覚えました。「自分たちの老後は自分たちで何とかする、住まいやお金で子供や孫たちには迷惑をかけたくない」などと言われてしまい、やるせない気持ちになりました。日本の高度成長期を支え、自分を捨てて働き、社会に貢献してきた世代がそれに報いることもなく、「できるだけ静かに迷惑をかけずに生きたい」などと考えること自体が、本当に幸せなことなのでしょうか。
 人間は年を重ねるほどに、幸福感を強くもつのだそうです。幸福感を感じないことに時間を費やすことを避け、限られた時間を見据えて、平凡な日常から幸せを感じようとするからだそうです。本来人間が生きるということは関わりあっているということであり、誰かと接点を持って、誰かの世話になっているからこそ人間らしいともいえるのです。
 ですから私は伝えたいと思います。世話をかけることは幸せに生きる秘訣。あえて身近な者に頼って、頼られて生活をすべきだと。迷惑をかけて生きよ、と。堂々と世話になり、そして、常に感謝と謙虚な心で接すればいいのです。それが幸せな人生の秘訣のような気がします。
【朝倉巨瑞】

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