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◎ 売却後も続く「不透明性」

 敬老は4施設が売却されて5カ月がたった今でも、具体的な将来ビジョンや、4100万ドルの売上金の使い道などについて十分に示せていない。

 さらには、売却時に州司法長官が設置を義務づけた「コミュニティー諮問委員会(コミュニティー・アドバイザリー・ボード=CAB)」が機能していないだけでなく、極めて不可解な動きさえ見せている。

 CABは本来、新しいオーナーの運営を助け、助言し、監視し、さらに日系コミュニティーとの橋渡しを担うものだ。問題があれば州司法当局に報告する役割も担う。

 メンバーは10人以内とされ、敬老側が人選を行った。そのうちの3人は州司法当局の通達により「高齢者を守る会」から選ばれることになっていたが、つい最近までその3人はミーティングの出席を拒否されていた。最近になってようやく川口理事長から応募書類を提出するように指示があり、3人のうち2人がメンバーになることを許可された。

 羅府新報はCABの代表ブルース石松氏、さらに川口理事長に何度となくコミュニティーに情報を公開するよう申し込んでいるが、いまだに誰がメンバーなのか、どのような話し合いがされているのかなど全く公開されず、秘密裏に話し合いが行われている。

 売却プロセスにおいて「不透明」であることが問題視され、大きな反対運動が起きた。それにも関わらず、いまだに「不透明」なことが多いゆえ日系コミュニティーを困惑させ、信用を失わせたままでいる。

 敬老は4施設売却後、非営利団体に向けて主にコンサルタント業務を行う「Draper Consulting Group」(サンタモニカ)を雇い、今後の運営のために日系社会の主なリーダーたちおよそ40人に聞き取り調査を行った。その調査結果が理事たちに報告され、現在、ビジョンづくりが行われているという。

 ある関係者は、「敬老は4施設を売却した後でも、敬老という組織でのみ高齢者向けのプログラムを運営していきたいという思いがあったと思う。しかし、それは現実的に難しいという判断から、日系社会にとけ込んで、信頼を取り戻し、協力を得て運営を行おうという意図があるのではないか」と分析している。【中西奈緒】

◎ 新しいリーダーシップを
「高齢者を守る会」副会長 池田啓子(心理学博士)

 4施設の売却反対活動でリーダーシップをとった「高齢者を守る会」(旧、敬老を守る会)の副会長、池田啓子氏は次のようなコメントを寄せた。

 「ショーン三宅氏が敬老の代表ならびに最高執行責任者(CEO)の地位から引退したことは、リーダーシップ交代への扉を開くものです。日系社会の価値観と将来への展望を具体化できるリーダーシップへの交代です。

 数え切れないほどのコミュニティーの人々が敬老とカリフォルニア州司法当局に対して、敬老4施設の売却差し止めを要請する請願書に署名しました。しかし、三宅氏と敬老理事会はコミュニティーの声に耳を傾けようとはしませんでした。それどころか、コミュニティーの人々が当然の権利として意見を発表できるはずだった公聴会を一切実施せずに売却を認可するよう、州司法長官に対して要求したのです。

 敬老側の慇懃(いんぎん)無礼な返答はいつも同じで、コミュニティーからの質問にはウェブサイトに返答が掲載してあるからそれを読め、というものでした。

 もし三宅氏が早い段階で退任していれば、あるいは理事会から罷免されていれば、新しいリーダーシップの下で私たちの先達の使命を引き継ぐ機会が芽生えていたことでしょう。そうすれば、多くの居住者や職員たちが現在受けている苦難、すなわち慣れ親しんだ施設を離れることを余儀なくされ、安全な居住先や勤務先を探してさまよう、といった事態は避けられていたはずです。

 私たちは、三宅氏だけでなく、現在の理事会・全執行部が退陣することを求めています。引退者ホーム、看護ホーム、中間看護ホームの管理運営を行なわない現在の敬老執行部は、その存在理由を完全に失っているからです。

 「敬老」は今、新しいリーダーシップを必要としています。新しいリーダーシップの下、「敬老」はかつて日系社会の象徴であった施設をコミュニティーの人々と協力して再建すべきなのです。「敬老」が日本文化の機微(きび)に基づくヘルスケアを提供する立派な機関として再登場するなら、過去何カ月にもわたって生じた日系社会の分裂を癒し、修復することができるでしょう。そしてそれこそが、わが日系社会の高齢者が必要としたとき、真に頼ることのできる安全な場所を保証することとなるのです。

 新しいリーダーシップを選ぶにあたって、公平で偏らない手順が取られ、コミュニティーの意見がしっかりと反映されることが非常に重要です。

※2015年9月からの敬老売却関連記事は日本語と英語でこちらから

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