F1モナコGP、ル・マン24時間耐久レースと並び、自動車の「世界3大レース」と称されるインディ500が、メモリアルデー・ウィークエンドに開かれ、8度目挑戦の佐藤琢磨が、トップでチェッカーフラッグを受けた。日本人初優勝の偉業をついに成し遂げ、1911年に第1回大会が開かれ、今年101回目を迎えた伝統のレースに名を刻んだ。
 日本人でメジャー大会を制する日を待ち望んでいた。テニスの錦織、ゴルフの松山、そして佐藤の3人のうちの1人と思っていたが、佐藤が先を越し、若い2人は刺激を受けたことだろう。
 本番は4番手からスタート。順調に周回を重ねたが、中盤のピットストップでてこずり、一時17位まで後退する。だが信条の「No Attack, No Chance」を貫き、1台また1台と抜いて着実に順位を上げ、終盤で2位に浮上した。ベテランドライバーは今年40歳。「不惑」の通り、迷うことなく攻め続けた。残り5周でトップに立つと、最後はわずか0・2秒差でデッドヒートを制した。
 テレビの生中継では、歴史的瞬間のピットとの無線の交信が聞かれ、流ちょうな英語を話すチャンピオンだが言葉にならず、ただ叫ぶのみ。ドラマチックなクライマックスをテレビでハラハラしながら祈る気持ちで見届けた私も、思わず感動し叫んでしまった。
 ウイニングランで日の丸を高々と掲げた雄姿は、かっこよかった。優勝インタビューでは、歓喜の渦の中、支援を続けた東日本大震災の被災地へのエールも忘れず、性格のいいジェントルマンらしかった。当然、日本でも話題となり、モータースポーツが、大きく取り上げられたことがうれしい。
 2013年のロングビーチでは、日本人初優勝を飾った。ワイン好きとして知られ、その記念に600本を作り、この4月に思い出の地、ロングビーチで発表したばかりだった。私は取材で立ち合い「次はもちろん、インディ500優勝記念ワインですね」と問うと「そうします」と誓い、現実になった。飲むのがもったいない気がするが、最高の優勝の香りが漂う美酒となるだろう。「おめでとう」。カンパーイ!【永田 潤】

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