大谷翔平選手の口座から不正に送金したとして銀行詐欺の疑いで起訴された水原一平容疑者による事件について、気になっていることがある。そもそもどうして水原氏が賭博に手を出すようになったのかという点である。それまで賭け事をしていたとの情報がないだけに、いっそう気になるのである。
 彼と賭博の胴元との最初のコンタクトは、2021年の9月だったという。それからわずか2カ月後の11月に、大谷選手の口座から胴元へ4万ドルが振り込まれた。その後送金額はどんどん膨れ上がっていったわけだが、21年といえば、コロナ禍がピークを過ぎて間もない頃である。感染症が広まり始めた頃から大リーグは試合を制限したり、延期したり、中止したり、観客なしの試合を開催しても選手の報酬の問題があったりし、不安定な状況が続いていた。そんな時期を、球団から雇われた一通訳者という立場の水原氏はどのような心境で過ごしていたのだろうか。
 当時の彼のエンゼルスからの給料は年間8・5万ドルほどだったという説がある。これが多いか少ないかはさておき、不安定な状況下、身分の保証のない自分の将来に不安を抱くようになったとしても不思議ではないだろう。そんな不安が賭け事へと彼を駆り立てたのだろうか。
 最初は少額の賭け金だった。負け続けて、負債はどんどん膨らんでいく。もう、誰にも相談することができない。コロナ禍による孤独と、保証のない立場という孤独の中で、孤立を深めていく。ギャンブル依存症は重くなる一方だったに違いない。
 バッターボックスに入る時の一礼やごみ拾いなど、大谷選手の日本人的な行動を通訳時に説明するなどもした水原氏は、大谷選手のよい相棒だと思われてきた。その彼は、どれほど大谷選手を傷つけたかよく知っているはずだ。今は大谷選手への謝罪の気持ちを強めており、ギャンブル依存症の治療に努めたいという気持ちも示しているという。自分が犯した罪に対する償いは償いとして十分果たしてもらいたいと思うとともに、彼の更生を心から期待したいと思う。大谷選手もそれを強く望んでいるに違いない。(長島幸和)

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