目を閉じてゆっくり息を吸い、そして吐く。普段は意識しないけれど、わざわざ呼吸に意識を向ける。「お腹がすいた」とか「明日はコラムの締め切りだ」とか、頭の中にあるいろんな邪念を振り払い、ただただ呼吸の音に耳を澄ますことに集中する。
 これは「ヨガ」で教えてもらったこと。もともと飽きっぽい性格なのにもう1年以上続く習い事だ。朝起きてすぐに一人で実践することも。
 はやっているのか、ロサンゼルスにも山ほど教室があった。かつて、羅府新報の編集長には「そんなのただのファッションだ。庭の草むしりで十分いい運動になる!」なんて、いじられていたのが懐かしい。
 ヨガは約5千年前のインドで誕生した。当時の医学や科学、天文学、哲学などの思想が反映されているらしい。難しいことはいまだによく分からないけれど、ヨガの後は自律神経のバランスが整うようで、すこぶる気分が良い。
 インストラクターの指示に従いながらゆっくりポーズをとる。ただあぐらをかいて瞑想をする時間もある。呼吸に意識を集中させると頭の中はいつしか空っぽになり、頭も体もリラックスしてスッキリ。仕事帰りにレッスンを受けると、その夜は快眠が待っている。
 私たちは寝ているとき以外、常に何かしら考え事をしている。だから、意識的に頭の中を空っぽにすることに意味があるのだと思う。
 日本の社会はストレスフル。帰国組の友人との話題もいつも一緒。「なんで日本社会はこんなに窮屈なのか」と。日々仕事でニュースに接していても同じ。秘書に暴言を吐く国会議員に、市民を「こんな人たち」と罵倒する宰相…。日本の終末をみているようで、怒りがこみ上げ、心が疲弊してしまう。
 でも愚痴を言っても、心が乱れてエネルギーが消費されていくだけ。そういう時にこそ、ヨガに没頭すれば不思議と心穏やかに「平和」を感じられる。
 「もしも世界の平和を望むなら、あなたが平和に生きなければなりません」というインドのヨガ賢人の言葉を聞いたことがある。とりあえず心と体の健康のために、日本と世界の平和のために、ヨガを続けよう。新たな発見や学びが深まることがあれば、またこのコラムのネタにしようかな。【中西奈緒】

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