4年前の2013年アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC総会で、2020年夏期五輪の開催地に東京が最終投票に勝ちIOC会長が「トキョー」と発表した場面、何度もTVで見たが、正直「アリャー」と思った。東日本大震災からまだ2年しか経たず復旧も復興も道遠い時だ。困難の中で苦闘している東北の人たちも五輪どころじゃない、これで金も関心も五輪に持って行かれると焦りの気持ちでは、と想像した。五輪は良さもあり腐す気はないが、日本は今五輪でうつつを抜かす時かと思った。
 しかも開催地の立候補申請は大震災が発生したばかりの2011年夏にしている。誘致に動いた石原、猪瀬と続く都知事は東京の名を上げる、日本に経済効果が、などと正当化したが経済効果は主には東京だけだ。五輪の後は多く反動が来る、五輪用に建設した大型諸施設が五輪後は有効活用できず維持経費赤字の次世代へ負の遺産になる実例が多い。最近のリオも同じ。都民大半もクールで53年前アジア初の東京五輪の熱狂はない。五輪は利権の腐敗が付き物、環境問題も多い。良さもあるが大局として今の日本に五輪が欲しいか、逆に優先すべき他の大事がたくさんある。
 さらに、この五輪は開催が7月下旬から8月上旬の17日間、暑い東京の夏で一番暑い時期、高温多湿の厳しさはアジア南国以上だ。日本の夏は一日に700人、800人と熱中症で倒れる人が出る日がある。重体の人、死者も出る。日本の友人が狂ってると言ってきた。大げさに響くが本当だ。日本の最も酷暑の時期に選手は競技し大観衆が見に行く。64年の東京オリンピックは秋10月だった。10月から11月の日本は一番爽やかな季節で晴天が多い。53年前の東京五輪は開会式当日からスポーツシーズンらしい青空の日が続いた。蒸し暑い真夏の東京は五輪に向かない。
 決まってしまった五輪は巨額予算超過でやるしかない形で進んでいる。事故なく行くよう、利権腐敗を排除し(もう有るが)、負の遺産を残さぬよう祈るのみだ。そして五輪の陰で被災各地がおろそかにされないよう目配り、支援を忘れまい。【半田俊夫】

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