「未来のミライ」は4歳の男の子が、生まれたばかりの妹に愛情を注ぐ両親にかまってもらえず、時空を超えて未来から来た妹と出会い、家族愛を育むストーリー。記者会見に臨んだ細田守監督は、同作が自身の家族をモデルにしたとし「どこにでもあるような日本の片隅の家族で起こったことを子どもの目線で描いた」と紹介。配給は96カ国に上り「美しい映画だ」と評価を受けたことに「オリエンタリズムに感動したのではなく、外国でも自分の家族のように思って受け止めてもらえたと思う。日本の子供の話が、インターナショナルに通じる表現になりうれしい」と喜ぶ。
アニメーション映画では家族を題材にすることはまれとし「(今作のように)ここまで描くことはまずない。自分でも変わったことをやっていると思った」「世界中の映画作家たちと、語り合う際にインターナショナルなモチーフになるのが家族。今の日本をどう捉え、どう表現するかのみならず、いろんな国が家族の問題に関心があると思う」と力を込めた。
アカデミー賞については「世界のさまざまな映画賞の中でも非常に特別な存在。そこに日本の作品がノミネートされて記録に残し、映画としての存在感を残し、大きなことだと思う」と胸を張る。授賞式には「小さなプライベートな話が、映画の価値を決めるような重要な物差しを持つ映画祭に呼ばれた意味を噛み締めながら臨みたい」と語った。
ノミネートされたライバル4作品について「他はアクションと冒険映画。『未来のミライ』 は、子供を主人公にしながら、映画の表現の可能性を広げるような映画と自負している」と力説。「そういうものを候補にしてもらったアカデミー賞のすごさ、懐の大きさ、評価側の気持ちを感じる」。受賞の自信については「既存のアクションを選ぶか、新しい映画を選ぶか。2分の1」と話した。
万引き家族の是枝監督は、あいにくこの日のイベントに参加できず、松崎薫プロデューサーがあいさつに立ち、監督のメッセージを読み上げた。同日午後に開かれたアカデミー候補者の昼食会に参加した監督は、受賞レースの投票とは打って変わった雰囲気の映画を愛する人々との温かい交流に興奮し魅了されたとし「私が初めて経験する授賞式までのこの3週間を楽しみたい」と述べた。【永田潤、写真も】