「トナラーってご存知?」
 在米の女流画家M子さんから聞かれた。彼女は、米国に帰化してから何十年というのに日本の最新情報には恐ろしいほど精通している。誰かが「トナラー」とツィートしてから一気に広まった造語だという。
 「トナラー」の「トナ」は日本語の「隣り」。電車やバスに乗った時、席が空いても誰かの隣に座りたがる人を指す。座られた人は大半が不愉快になる。なぜか。
 人間にはパーソナル・スペース(対人距離)という「他人に侵害されたくない自分の空間」があるかららしい。
 米人類学者のエドワード・ホール博士によると、この対人距離には男女差や民族間の差があるという。アメリカ人の場合は他の国民より短い。むしろ距離の近さを快いと感じるアメリカ人の方が多いと、同博士は指摘している。何かというと、アメリカ人はハグするのはそのためかもしれない。
 「日本人の場合、家族や恋人以外の人に45センチ(16インチ)以内に入られると、不快感を感じる人が大半だ」と「ニッポン放送」の垣花正氏が断定している。(根拠は示していないが)
 「対人距離」感は、車をとめる距離感覚にも表れている。ガラガラの駐車場でも隣にピタッととめる人が少なくない。これも「トナラー心理」だというのだ。電車でも駐車場でも人間はなぜ見も知らぬ他人(他人の車)に近づきたくなるのか?
 M子さんは、電車については自信ありげに(?)言い切る。
 「車内で若い女のコの隣に座りたがるのはほとんどが中高年の男性なんですって。スケベ心なんでしょうね」ズバリ言われて二の句が継げない。(苦笑)
 だが、残念なこと(?)に、羅府のような全米屈指の車社会では、若い女性の隣に座りたくてもそのチャンスは稀有だ。
 一方、パーキング・ロットでは「トナラー」さんによく出くわす。
 Quoraというサイトでは、とめてある車の隣に駐車したがるのはなぜかをめぐって白熱した論議が繰り広げられている。
 そこで私も遊び心も手伝って「隣に車をとめたがる人たちを日本ではトナラーと呼んでますよ」と書き込んだ。「いっそのこと、トナラー(Tonarer)を英語にしませんか。Tsunamiとか、Kabukiとか言うように」
 早速、「Awesome!」と賛同するフォロアーが出てきた。【高濱 賛】

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