はっきりしないインフォメーションしか届かないまま、いよいよ恒例のファンドレイジングまで2週間と迫った頃、管理職あたりがそわそわし始め、準備が進んでいない様子がみえてきた。
州や連邦政府の援助が当てにならない昨今、コミュニティーの非営利団体のファンドレイジングは各種プログラムの死活問題であり、どの団体も必死で趣向を凝らして支援者に協力を呼びかけるのだが、今回は最初からテーマが見えず、ただ飲み食いの社交の場を提供して、その見返りに「寄付をねだる」様子が見えて気が乗らなかった。
他のスタッフからもどうなっているのですかと聞かれても、「私も蚊帳の外で…」と応えるしかなかったのが、期日が迫ってきてはじめて「スタッフ全員の協力」を呼びかけられて蚊帳の中に引き入れられた。
サイレント・オークションの準備が気になって、ビットシートの準備は? と訊ねたところ、「インターネットで賭けてもらうから、(そんなものは)要らない」と素気無い返事。
なるほどそれでシニア・スタッフが蚊帳の外になった理由がわかった。
時は流れている。21世紀のハイテクノロジーの時代に、「去年は…」は通用しなくなっている。
しかしコミュニティーの中にはコンピューターだけで情報交換の出来る世代もいれば、携帯電話の操作だけでも四苦八苦している世代もいる。そんな人々(私も含めて)を置き去りにして列車を走らせて良いのだろうか。
クラスの登録一つにしても、「ウエブサイトからペイパルで払い込んでもらえば申し込み用紙は不要です」と言われると、今までどおり小切手で支払いたい人たちはその時点で切り捨てられてしまう。
ファンドレイジングの当日、しばしばWiFiがダウンして担当者がうろうろする場面があり、「だから言ったでしょ。新しければ良いってモンじゃないって」と一人溜飲を下げる場面もあり、何よりも自分の目指す物件を獲得するために、次々と金額を上げながら競り合うサイレントオークションの面白味が半減した気がする。
ハイテク化する職場の中の骨董品の愚痴である。【川口加代子】