在外選挙は、2004年7月の参議院議員選挙から海外で投票できるようになりました。これはロサンゼルスで日本食の普及に貢献した金井紀年氏や、建築家として日系社会に貢献した高瀬隼彦氏を中心とした海外有権者ネットワークの皆さんが、最高裁までの法廷論争を10年以上も続けて勝ち取った権利です。15年前には約80万人の有権者が海外に在住していましたが、現在は約105万人の海外在住者がいるといわれています。一選挙区を作れるくらいの規模なので、海外選挙区から議員を出せるという見解もあるくらいです。
 ですが、在外選挙の投票率はわずか2%前後といわれています。これでは、過疎の町や選挙をしない若者の声が政策に反映されにくいように、海外からの声もかき消されています。海外で投票された投票用紙は、不正がないよう世界中の複数の領事館職員が一斉に日本まで届けます。2%のために莫大な手間と費用をかけて海外選挙が行われているのです。
 であるのに、投票率が極端に低いのは、選挙人登録という面倒な作業や、遠すぎる投票所、早すぎる締め切りなど、選挙の権利を剥奪されているのに等しい投票制度だといわれています。今回の選挙でも3時間以上かけて特急列車で選挙に行ったドイツの方や、100ドル近い郵便費用をかけて郵便投票をしたが、配送ミスで戻ってきてしまい1票が無駄になったと嘆いた海外在住の方がいました。
 実はアメリカ人は宇宙からでもEメールで投票ができます。なのに、日本人の宇宙飛行士は宇宙からでは投票ができないのです。日本の在外選挙システムでは、民主主義の国と呼べるのでしょうか。エストニアではすでに2005年から電子投票が行われており、期間中は再投票もできるという画期的なシステムで、40%以上の有権者がネット投票を選んでいます。
 そういった中、3年後の参議院選挙から海外でもネット投票の実証実験がはじまる、というニュースが流れてきました。すでに他界された金井氏や高瀬氏の望みは在外選挙権以上に、海外からの声が日本を動かす力になるのだということではないでしょうか。【朝倉巨瑞】

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