イベントには、153人が参加し多くの高齢者が元気な姿を見せた
 オレンジ郡日系協会(OCJAA、藤田喜美子会長)は18日、「敬老感謝の集いと日本文化奨学金授与式」をインターネットでつないだバーチャル方式で催した。153人が参加し、同郡在住の80歳以上の長寿者12人を敬老表彰するとともに、日本文化の継承者に対する奨学金授与式では、将来が嘱望される若者の前途を祝した。
 34回目を迎える秋恒例のイベントだが、今年は新型コロナウイルスの影響で大きく様変わりした。昨年までの会場での開催はあきらめたものの「コロナで、つらい思いをしているお年寄りを喜ばせたい」と、理事会が奮起し、入念に準備してバーチャル開催にこぎ着けた。今年はまた毎年夏に催しているゴルフ大会を中止したため、予定していたオレンジ郡在住の新大学生3人に対する奨学金授与式を催した。

あいさつに立つ藤田喜美子会長
 あいさつに立った藤田会長は、実際に対面してあいさつを交わしハグできないことが残念だとしたが「多くのお年寄りの健康生活を祝い、日系社会に長年献身した人々に感謝することができる」と開催の意義を強調した。敬老表彰者12人と4人の奨学金受賞者に対し、「本日は本当におめでとうございます」と祝意を伝えた。OCJAAが来年、創立35周年の節目を迎えるとし、先輩会員の労苦を思い浮かべながら「輝かしい歴史を築いてくれた」とたたえ、「伝統を受け継ぎたい」と意欲を示した。「OCに住む皆さんが多くの仲間を持って快適なコミュニティーライフを過ごすことができるように、20人の理事とともに活動している」と伝えた。
 OCJAAの活動は多岐にわたる。日本語による社会福祉の情報提供、無料インルエンザ予防接種、各種セミナー(健康、介護、教育など)、情報月刊誌「オレンジ・ネットワーク」発行、教育や趣味の教室、地域社会の諸団体との交流、地域の功労者顕彰、資金集めのゴルフ大会、大学進学者への奨学金授与、日本文化継承者への奨学金授与など。だが、これらの活発な活動は、コロナの感染拡大により一変した。
 新年会はコロナウイルスがまん延する直前だったため運良く開催できたが、外出自粛令が発令された3月下旬以降は、ZOOM会議を利用したiPadやiPhoneのクラスなどに限られているため会員が顔を合わせることはない。だが、この日は異なり、藤田会長は「画面を通して祝福を受ける全ての皆さんの顔を見ることができた。コロナウイルスに負けずにますます元気で素晴らしい人生をエンジョイすることを心より祈りたい」「来年は全員が会場で一緒にお弁当を食べられることを心から願って、再会できる日を楽しみにしている」と、優しく語りかけた。
子供たちの元気のいい童謡の歌唱
 80歳以上の敬老表彰者は、鈴木数重、小林英子、小坂田正朗、高橋薫、大竹博、大竹幾久子、鈴木康彦、鈴木恭子、田畑広光、田畑初枝、岡田エーソル、中林正宏の12氏。藤田会長が賞状を読み上げた。表彰者を代表し、小坂田氏が謝辞を述べ「ここで表彰されたわれわれ一同、多少なりとも社会に貢献したことを誇りに思っている。これからの人生も有意義に過ごしていきたい」と語った。
 エンターテインメントは、地元からは毎年ステージで演技する社中の日本民謡と、歌・ダンス、子どもの童謡の録画が披露された。今年はまた、バーチャルイベントの利点を生かして、世界の国々の人々による音楽に合わせたダンスを皮切りに、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏、1万人の第九コンサートのビデオを流した。高齢者の中には、普段はコンピューターを使わず、動画を視聴することがない人も多く、「感動した」などの声が多く聞かれた。地元の84歳の中村恭子さんの歌とダンスを見た人は「とても励まされた」と、同年代のパーフォーマンスに刺激を受けていた。
 OCJAAは、資金集めのためのゴルフ大会が中止になり、財政面で痛手となった。だが、活動の趣旨に賛同する個人や企業から、このたびのイベントに合わせて寄付が次々に寄せられ、計約8千ドルが集まったという。
 イベント後に協力を呼びかけたアンケートの回答と、郵送したギフトを受け取った参加者からの礼状が送られた。参加者はコロナ禍の長期の自宅待機で、落ち込んでいたが、イベントに参加して仲間の顔を久しぶりに見るなどし気持ちが晴れ「久々に日本語の楽しいイベントを見て涙が止まらなかった」「子供たちの歌に癒やされ、101歳の三宅さんのスピーチを聞いて元気をもらった」などと喜ぶ声が多く聞かれた。半年ぶりに化粧をして画面に映し出された自分の顔を見て気を良くした80代の女性は「イベント後、急に元気になった」。自宅で転倒し救急車で運ばれ3日間入院した人は気落ちしていたが、「ポジティブに生きる気力をもらった。まだまだ頑張らなくてはならない」
日本民謡の松豊会の演奏
 反響の大きさに藤田会長は「オンラインのイベントが、自宅にこもっているシニアの皆さんに与える影響力の強さを実感した。こんなに喜んでもらえるとは思っていなかったので、びっくりしている。感激した多数の人に誉めてもらい、こちらが感激し、とてもありがたく思う」と述べた。コンピューターに不慣れな高齢者は、イベント参加をためらったというが、ZOOMの接続の仕方を学ぶクラスを3回開いたり、自宅に訪問し教えたりして参加を促したことが実を結んだ。藤田会長は「われわれが準備した努力の何十倍も喜んでもらい、本当にイベントをやって良かった」と話した。
 イベントは昨年まではオレンジ郡在住者のみを招待していたが、今回はオンライン開催のためロサンゼルスやハワイ、日本からも招くことができた。また、エンターテインメントも海外で撮影されたビデオを紹介し、藤田会長は「オンラインイベントだからこそできることで、世界とつながった」と喜んだ。会長はオンラインイベントの可能性を強調し、コロナ禍だからオンラインを利用しているのではなく、今後も有効に活用するといい、各種セミナーで日本とつないで最新の情報、特に介護に力を入れ、大学で研究する専門家を講師に招く意志を示した。
 オレンジ郡日系協会については、電話714・730・3551。
 www.ocjaa.org/

受賞者4人に千ドル授与
日本文化継承者と新大学生に

 日本文化継承者を支援する練尾日本文化奨学金は、各分野で活躍する若者の育成を目的に2002年に創設された。その次世代の担い手に対する奨学金の授与式を催し、剣道の有賀琴音さんが選ばれた。今秋入学した新大学生3人は、マヤ・ワングさん、マイア・オガネクさん、タイラ朝倉さんの3人。受賞者それぞれに1000ドルが授与された。

奨学金を授与された4人。左上時計回りに剣道の有賀琴音さんと、新大学生のマヤ・ワングさん、タイラ朝倉さん 、マイア・オガネクさん
 各受賞者経歴は、次の通り。
 有賀琴音さん 6歳の時から剣道を始め12年が経ち2段の腕前を持つ。小さいころは引っ込み思案だったが、剣道で気合を掛けたり、叫んだりするおかげで、身体的にも精神的にも強くなり、人前でも発言ができるようになった。大会では優勝を幾度も果たし、3年前からボランティアとして武徳殿道場で小さい子供たちに指導をしている。
 マヤ・ワングさん タスティンのベックマン高校を卒業し、カリフォルニア州立大学サンディエゴ校で歴史を専攻している。将来は高校教育に携わる仕事に就くことを志している。日本人の母親を持ち、あさひ学園に通い日本語が堪能。音楽に造詣が深く、ピアノ、打楽器、太鼓などもたしなみ、高校ではマーチングバンドで活躍した。
 マイア・オガネクさん ブエナパークのトロイ高校を卒業し、ワシントン大学で生物学を専攻している。将来は医師を志し、小児外科もしくは一般の外科医を目指す。生物学の専攻を選んだ理由は、テレビの「グレース・アナトミー」や「クリミナル・マインド」などの医学関係の番組のファンだったからという。長い間バスケットボールチームでも活躍した。
 タイラ朝倉さん アーバインのポートラ高校を卒業し、カリフォルニア州立大学デービス校で科学テクノロジーを専攻している。将来は気象学に関する仕事を志望する。小さい頃からテニスに打ち込み、高校時代は水球に専念したスポーツマン。OCJAAのイベントでは欠かせないボランティアとして活躍している。
最後の抽選会を終え、手を振ってイベントを締めくくる(左から)藤田会長、司会の石井文子さん、岡添恭幸・イベント委員長

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