日本も世界と同じ土俵で語られて比較されるようになったのは救いと思う。いろんな課題があらわになってきている。これも新型コロナのおかげなのか。
 ひとつは医療システム。日本はアメリカに比べて桁違いに感染者が少ないのに、病床が足りず医療崩壊が叫ばれた。人口当たりの病院数も病床数も圧倒的に多いのになぜなのか。不思議に思ったアメリカ人も多いのではないだろうか。
 日米の専門家が指摘するのは日本の平均入院日数の長さ。病院の報酬が入院1日当たりいくらの制度で、長く入院してもらい満床にすることで経営が成り立つ。病院全体の約8割が中小規模の民間病院であることから、ICUスキルのある医師や看護師が分散。できうる感染対策にも限界があり感染者の受け入れが難しい。
 日本の医療制度には多くの利点もある。近くに病院がたくさんあり自由に選べてアクセスもいい。国民皆保険のおかげで医療費も比較的安い。でもコロナという非常時には適応できず、構造的な問題が浮き彫りになった。
 もうひとつはセンセーショナルに表に出た膿(うみ)。きっかけはコロナで延期された東京五輪。開催の可否が世界から注目される中、組織委員会の森喜朗前会長が女性蔑視発言をした。誤解を恐れずに言えば、いいタイミングだったのかもしれない。
 メディアが大きく取り上げ、世界規模で大バッシングが起きた。スポンサーのグローバル企業からの批判もあって謝罪して撤回し辞任したが、本人は依然何が問題であるか分かっていないだろう。残念ながら日本では今でも日常的にある話。今の政権は女性の活躍を政策に掲げているが、それがうわべだけであることが露呈した。世界が注目する場面で発言したことで、日本がいまだにこんな問題を抱えた国だと広く伝えることができた。
 グローバル化によって新型コロナが世界中にパンデミックをもたらした。それと一緒に、日本の旧態依然とした制度や価値観をあぶり出した。間違いなく変革を求める原動力になると思うけれど、それにしても、外圧がないと変化できない日本というのはなんとも情けない限りである。【中西奈緒】

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