ホワイトハウスの住人が入れ替わって、州にもよるだろうが気のせいか、コロナ・パンデミックの終息に向けて拍車がかかってきたようだ。
ワクチンも接種が1回で済むジョンソン&ジョンソン社製が遅ればせながらくつわをそろえ、今や3製薬会社が出荷を始め、バイデン大統領も5月末までに3億の成人国民にワクチンが行き渡るだろうと、希望的観測を発表した。
それで安心かといえばまだまだ毎日感染者も出ており、死者も後を絶たない。ワクチン接種を受けても体に免疫ができるまでに2週間はかかるという。
数年振りに大雪と寒波に見舞われたシカゴの冬も、気温が華氏32度を超える日が続けばミシガン湖の氷が解け、路肩に積み上げられた雪の山が日々低くなり、道行く人の表情も和らいでくる。
長い冬に耐える北国の人々にとって、春の到来は大きな喜びである。その上、目に見えないCOVID・19の恐怖にさらされた1年間の緊張が、ワクチン接種を受けたという気の緩みとなり、普段は用心深い人でもこのまま平常通りの暮らしに戻れるような錯覚に陥るから恐ろしい。3度目のリバウンドへの警報はこの辺にあると思うのだが、テキサスの州知事はマスク不要論者だそうだ。
日々COVID・19に直面している医療関係者や、犠牲者になる確率の高い高齢者のワクチン接種を優先させるとき、その枠から一時的にしろはみ出した人々が、一日も早く自分を、あるいは自分の家族を安全圏に置きたいと思うのは理解できるが、イリノイ州のブルース・ラウナー前州知事は、フロリダで1月にすでに接種を受けており、最近同州のディサンティス州知事にお礼(?)として25万ドルを選挙資金として寄付したというニュースに朝から気分が悪い。
インターネットが使えないシニアが2時間も電話にしがみついて接種の予約を取ろうとしている時期に、寒いイリノイからフロリダに足を伸ばし、苦も無くワクチンを受けられるラウナー氏は十指に余るナーシングホームを経営する実業家だ。金にものを言わせる人の政界への復帰はぜひとも遠慮してもらいたい。【川口加代子】