映画「なんくるないさぁ」がロサンゼルスで初上映され、主演の仲田幸子さんが最優秀女優賞に輝きました。受賞の日が幸子さんの89歳の誕生日となり、ギネス級の受賞に沖縄では大きく報道され、映画祭出席のためにロサンゼルスを訪問した幸子さんの孫で主演の仲田まさえさんは、涙ぐんで祖母の受賞を喜びました。
 実は入国時や帰国時の面倒な手続きや負担を説明した時に、まさえさんは訪米することをとても迷っていました。「そんなに大変な思いをしてアメリカに行って、何か有意義な交流ができ、私が得ることはありますか?」という答えの難しい質問をもらいました。沖縄で幼い頃から芸能や歌の道を磨き披露してきた彼女に対して、表面だけの薄っぺらい回答を伝えるわけにいきませんでした。「映画祭に集まる人がいます。実際にハリウッドに挑戦し、映画を製作し、演じて活躍する日本人や日系人、そしてアメリカの人たちがいます。沖縄出身の方たちも歓迎し応援してくれるはず」と伝えました。アメリカで苦労を重ねてきた人と話すだけでも、きっと彼女の人生で、かけがえのない経験になると思っていました。
 この映画のエンディング曲は、「クイナも鳴いて海鳥」という歌でした。この歌には、「もつれた糸が解けぬままに…心をぬらす飛べないクイナ」「会えたなら、ひと目会えたら、伝えたいこの思い」という歌詞があります。このクイナは自由に見えるのに、自分自身を縛り付ける心の枷(かせ)があるではと思いました。上映後の壇上で三線を抱えて歌う姿に、彼女の心情とクイナの思いが重なりました。
 「なんくるないさぁ」には、「まくとぅーそーけー」という前にくる言葉がついています。「今まで真心を持って正直に生きてきたのだから、大丈夫だよ、なんとかなるよ」という、沖縄の人の優しい気持ちを伝える沖縄独特の表現なのです。Let it beやケセラセラのように、どうにかなるさという意味だけではなく、一生懸命さ、素直さや努力に対して一緒に寄り添うから、という意味が込められているのです。【朝倉巨瑞】

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