【中西奈緒】 外でお酒が飲めるようになったら焼き肉に生ビールと決めていた。次のピークがいつやってくるか分からない。「今しかない、飲もう」と気持ちが高ぶっていた。
 しかし、いざ飲んでみると1杯だけで満足だった。毎日の日課だった晩酌も週末だけになった。あんなに好きだったお酒をそれほど欲しなくなるなんて、180度違う人生を送っているようだ。
 新たな変異ウイルスのオミクロン株を気にしつつも、日本の感染者数は今でもかなり低い水準で推移している。飲食店は人数制限こそあれ、通常営業を再開し、夜の人出も徐々に戻りつつある。
 ちまたでは「忘年会をするかしないか」という話題も聞こえてくる。日本生命が行ったアンケート結果がニュースになっていた。テーマは職場の人との「飲みニケーション」の必要性について。
 お酒を飲みながら語り合い親交を深めるという意味の「飲みニケーション」。これが「必要」「どちらかといえば必要」と答えた人は全体の38・2 %。昨年から16・1 ポイント減少した。理由の上位は「気を遣うから」や「仕事の延長と感じるから」。「コロナ禍で会食できない状況が続く中、仕事を進めてきたことで、お酒を介することの必要性に疑問を抱くようになったことを示している」との分析だった。
 自らに照らし合わせてみても必要性は感じない。お酒の席がなくても仕事はいたってうまく回っている。メールや電話、チームスの会議も快適。同僚との距離感もちょうどよく、仕事とプライベートのバランスも取れている。
 飲み会に限ったことではないだろう。さまざまなシーンで日頃から不要だと思っていたことやストレスに感じていたことから解放された人も多いのでは。職場のみならず家族や友人などの人間関係にまつわることも。行かなくてはならない、会わなくてはならない、何々しなくてはならない、をコロナは厳しく仕分けした。
 本当に望んでいることは何か、と心の声に耳を傾けることが増えた。お酒は飲みたい時に飲みたい人とだけがこれからの主流になるだろう。お財布、体、自分の気持ちにもやさしい時代になってきたかもしれない。

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