第二次世界大戦の退役軍人ローソン・イチロー・サカイ氏。AIを駆使し、来館者の質問に答える

 小東京の全米日系人博物館(JANM)で双方向技術を駆使した体験型の新展示「ローソン・イチロー・サカイのインタラクティブなストーリーファイル」が始まった。画期的なストーリーテリング・テクノロジーを用いた圧巻の内容。第二次世界大戦の退役軍人であるローソン・イチロー・サカイ氏との臨場感ある「対話」を体験できる。
 この新展示は、ストーリーファイル社のテクノロジーを使い、JANMが非営利団体ジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズの支援と共催によって開催するもの。11月28日にはCBS「サンデーモーニング」のゴールデンタイムの1時間特別番組「フォーエバー・ヤング—若さの泉を探して」で特集され、紹介された。
 「ストーリーファイルの人工知能(AI)アルゴリズムを使って、JANMを訪れた人がローソンと話せるようになった。ローソンの人生の経験や情熱、家族、好きな食べ物についても尋ねることができる」と、ジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズのコール・カワナ代表は話す。「未来の世代もローソンと話し、ローソンのレガシーを学ぶことができる」

ジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズの設立者のコール・カワナ氏

 カワナ氏はこのプロジェクトの構想と資金調達を行い、JANMとストーリーファイルと協力し、特殊な撮影手法を使って、サカイ氏の長大なインタビューを行った。サカイ氏は、米軍史上最も多くの勲章を受けた部隊の一つである第442連隊戦闘団の一員であり、二世退役軍人友人と家族の会(FFNV)の創設者だった。サカイ氏は2020年に96歳で逝去した。
 5日間に及んだ撮影では、サカイ氏に千以上の質問が投げ掛けられた。サカイ氏が口述する歴史は、その非凡な人生を余すところなく伝える。サカイ氏は、フランスでのブリュイエール解放、「失われた大隊」救出、イタリアでのゴシックライン突破など、442連隊の全ての主要な作戦に参加し、四つのパープル・ハート勲章とブロンズ・スター勲章を受章した。
 インタビューはストーリーファイル社の「キャプチャー・テクノロジー」を用いて、サカイ氏を中心に27台のカメラを360度に配置して撮影された。この特殊な撮影技術により、現在、JANMにおけるサカイ氏の展示は、等身大のスクリーンで行っているが、将来的にはホログラフィックな展示として映像を映し出すことができるという。
 ストーリーファイルのAIを活用した会話型映像テクノロジーは、実際にはそこにいない人物との対話を可能にする。
 来館者がサカイ氏に質問を投げ掛けると、サカイ氏が質問の答えを考え、回答する様子を見ることができる。さらにサカイ氏の話しぶりから、サカイ氏の感情を読み取ることもできる。

撮影はサカイ氏を取り囲み27台のカメラを360度配置した

 現在23歳のカワナ代表は、日系米国人による第二次世界大戦のオーラルヒストリーを記録する非営利団体「ジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズ」を2019年に創立した。カワナ氏は幼い頃から日系人史に関心を抱き、両親のユウジ・カワナ氏とエレン・カワナ氏がJANMを支援するのを間近で見てきた。またカワナ氏の祖父母であるリチャード・ムラカミ氏とマサコ・コガ・ムラカミ氏は、JANMの長年にわたる熱心なボランティアである。
 カワナ氏は南カリフォルニア大学のUSCショアー財団でボランティア活動を行い、オーラル・ヒストリーについて詳しく学ぶ機会を得た。そこでカワナ氏は、日系人の高齢者と一対一で交流する機会を持つ人はそれほど多くないことに気付いたという。
 カワナ氏はUSCで機械工学の学士号を取得している。
 一方、技術を提供するストーリーファイル社はロサンゼルスを拠点とするスタートアップで、これまでに、米国同時多発テロ事件の生存者、宇宙飛行士、タルサ大虐殺の最後の生き証人、俳優のウィリアム・シャトナー氏らとのプロジェクトを行ってきた。最近は、AIを活用した会話型映像を誰でもが使えるようにする、新たな家庭用プラットフォーム「ストーリーファイル・ライフ」を発表した。
 ストーリーファイル社のCEO兼共同設立者であるヘザー・スミス氏は、「JANMおよびジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズと提携してサカイ氏のレガシーを保存できることを光栄に思う」と述べている。「ローソン・サカイのストーリーファイルは、ローソンの物語を未来に伝え、交流することを実現する。人々がローソンのストーリーファイルに話しかけ、ローソンの経験をリアルタイムで対面して学んでいるのを見ると、胸がいっぱいになる」とスミス氏は話す。「ローソンの物語はこれから実現していく多くのプロジェクトの始まりである。コールとジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズと全米日系人博物館と共に、これから多数のストーリーファイルを制作することをを楽しみにしている」
 ジャパニーズ・アメリカン・ストーリーズ 2019年設立の非営利団体。博物館の展示や教室での教育ツールとしての使用を目的として、日系米国人の第二次世界大戦中の経験についてのAIオーラル・ヒストリー・プロジェクトを制作している。
 ストーリーファイル社 2017年に設立。AI、AR、VR、そして独自の革新的な技術を用いて、世代を超えた人と人とのつながりを創造・感化し、、過去、現在、そして未来をつなづ。ストーリーファイル社が開発したシステムは、そのストーリーを伝える人が自分の言葉で物語や体験を語る機会を提供する、世界初の会話型映像インタラクティブ・プラットフォームである。詳細は、StoryFile.comを閲覧するか、ソーシャルメディアで@StoryFileをフォローする。

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