ロシアのウクライナ侵攻が始まり日々悲しいニュースが多い中、ひまわりの種を手にしたウクライナ女性がロシア兵にその種を突き出し、「ポケットに入れろ、そうすればあなたが死んだ後にこのひまわりの種から花が咲く」。
普通の居住地でスマートフォンで撮影された映像から目が離せない。ウクライナワールドから発信され、ツイッターで世界中を駆け巡った。
この映像と1970年に大ヒットした映画「ひまわり」の詳細は、5日付磁針に朝倉さんが書かれているのでぜひご参照いただきたい。この映画を見た方には、今回のウクライナ侵攻が否応無しにオーバーラップしてしまう。
このウクライナ女性の映像を見ている時、60年以上前に流行ったピート・シーガーの楽曲「花はどこへ行った」が真っ先に頭に浮かんだ。当時日本語で歌われたいくつかの歌詞が本来のものとニュアンスが変わっているので、かいつまんだ荒訳を記す。( 2番以降は繰り返し部を省く)
1 花はどこへ行った
ずいぶん時が経った
あの少女たちが全部摘んでいった
あぁ、いつになったら分かるんだ
2 その少女たちはどこへ行った
若き男のもとへみな嫁いでいった
3 その若き男たちはどこへ行った
みな兵士として戦場へ行った
4 その兵士たちはどこへ行った
みな墓地で眠っている
5 その墓地はどうなった
花で覆われた野原になった
ピート・シーガーがこの曲を作曲した1955年の時点で反戦歌を意図していたかは不確かだが、60年代始めにジョー・ヒッカーソンがオリジナルの3番までの詩に、4番と5番の歌詞を追加したことで反戦歌としての趣がはっきりしてきた。そして1961年にキングストーントリオ、翌年のピーター、ポール&マリーの録音が世界的大ヒットになり、当時アメリカがベトナム戦争に介入したことも追い風となってその後の反戦歌「悲惨な戦争」「風に吹かれて」などと共にいろいろなジャンルのアーティストに歌われている。
初頭のウクライナ女性、あの映像の後半ではロシア兵から徒歩で離れていくように見受けられるが、その後の安否が気に掛かる。(清水一路)