子どもの頃、初めて見た恐竜・ゴジラの映画、その巨大さと醜さに驚き、やがてゴジラはさまざまな自衛隊の戦闘機や銃砲の攻撃を受けて傷つき深海に帰ってゆく。悲しくも哀れであり、その姿は長く心に残った。ゴジラは空前のヒットとなり、次々とシリーズが制作され、特撮の円谷監督はゴジラと共に世界に知れわたった。その後、恐竜の相方が数々登場したが、やはり愛されたのはゴジラだった。
 そんな恐竜が地球上にいたということは、子供たちの世界に深く刻まれた。しかし、世界各地でその化石が発見されているが、日本で発見されたというニュースは長らくなかった。だから学校では日本には恐竜はいなかったというのが常識となっていた。
 ところがここ20年ほどで、日本の各地で恐竜の化石が発見されて、世界の学界からも注目されているという。どうして最近になって日本で恐竜化石が発見され始めたのだろう。日本では、発見者が学者や大学の研究員ではなく、一般のマニアであるのが特徴だという。
 普通の社会人が普段は勤めに通いながら、休日になると海岸や川・山などに出掛け化石探しをするのが趣味なのだ。仕事でもなく研究者でもない、まったくの趣味だから気楽なものだ。日本では近年、少子高齢化が急速に進んでいる。会社を定年退職したり、自ら隠居したりして年金生活に入ると、何か生きがいがほしい。その趣味の一つが化石探しなのである。そういう人が増えたことが、マニアの恐竜化石の発見者につながっているようだ。
 恐竜が死に絶えた理由として、巨大な隕石(いんせき)が地球に衝突し火山活動の大活性化を促したため気温が急上昇し絶滅へつながった、という定説がある。しかし、もしそうならば恐竜の群がまとまって死に絶えた場所があり、そこで相当数の化石が見つかるはずだ。ところがそのような情報はまだなく、しかも恐竜の化石は世界の各地で発見されている。巨大隕石衝突による急激な気温や地球環境の変化はかなり長期間にわたって続き、恐竜の絶滅につながったのではないか。そんな考古学定説否定の根拠を日本から発信し、それがシニアの活躍によってなされているとしたら愉快ではないか。(若尾龍彦)

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