

米自動車レースの最高峰インディカー・シリーズ(全17戦)の今季第3戦、アキュラグランプリ決勝が10日、ロングビーチ・ダウンタウンの市街地コース(1・97マイル、85周)で行われた。佐藤琢磨(ホンダ)は残り2周でクラッシュし無念の17位に終わった。2番手からスタートしたジョセフ・ニューガーデン(米国、シボレー)が2戦連続優勝を飾った。ロマン・グロージャン(フランス、シボレー)が2位、アレックス・パロウ(スペイン、ホンダ)が3位となった。
レース序盤は、昨年の覇者で今年の予選ではトラックレコードを記録してポールポジションを獲得したコルトン・ハータ(米国、ホンダ)が引っ張った。6周目のターン1で単独クラッシュが起こり最初のイエローフラッグが出されたが、車は速やかに撤去され、10周目に再開。22周を超えた頃から最初のピットインが始まった。22番手から出走した佐藤は順位を着実に上げながら29周目に作業を終えた。

50周を過ぎた頃から各車が続々と2度目のピットへ。58周目、首位を走っていた昨季王者のパロウから2周後にピットインしたニューガーデンが、首尾良くパロウの目の前でコースに戻りトップに立った。
残り10周のターン8で2台が絡んだクラッシュのためイエローコーションとなった。ゴールまで6周でレースが再開され、ニューガーデンが2位に上がったグロージャンを突き放し、逃げ切った。終盤、後続の猛追を振り切ったニューガーデンは「ストレートでスピードが伸び、勝つことができた。シェビーパワーのおかげ」と誇った。

佐藤は、フリー走行から予選、決勝にかけて苦しんだ。2013年にインディカー初優勝を果たしたロングビーチには思い入れがあり意気込んでいたが、車を思うように仕上げられなかった。「週末を通してバランスが良い状態ではなく、スピードも乗らず苦労した。レースは後方からの追い上げだったが、9台抜きで(一時)13位まで上がり、力強く戦えたので良かった」と話した。「こういう苦しいレースの中でも力強く走れるということを見せ、チームと前進するができていい経験ができた。これからも頑張りたい」と前向きに語った。
佐藤のチームのピットストップにおける作戦は、耐久性に優れた「ブラックタイヤ」でスタートし、タイムが上がる「レッドタイヤ」に2回交換して追い上げる予定だった。だが、1回目の交換でレッドを装着したところ「バランスが著しく悪く、自分たちのセッティングではうまくコントロールできなかった」。ハイペースのレース展開となりタイヤの消耗が激しかったことから作戦を変え、2回目の交換でブラックに戻した。

13位で走行中の残り2周、ターン8でクラッシュを喫した。イエローコーションの際にピットインしてフレッシュタイヤで攻めてきたビーケイ(オランダ、シボレー)らの猛追に遭い、インを突かれ、押し出された形になった。路面に散らばったタイヤのカスに乗ってしまい、タイヤバリアに突っこみ、悔しい結果となった。「タイトなターン8に入り、抑えきれず、マーブルに乗ってしまった。(このクラッシュにより)最後はラップダウンになったが、力強く戦えたことがよかった」と述べた。パジェノとの接触(14位争いの60周目)により車の右側にダメージを負ったことが終盤の失速につながったことも明かした。
3度目の優勝を狙うインディ500(5月29日)に向けて、佐藤は「こればかりは、どうなるか分からないが、もちろん勝利を目指して走る」と意気込み、再来週から始めるレース会場でのテストで、新しいマシンに初めて乗ると言い「すごく楽しみにしている。期待してほしい」と声を弾ませた。
今季移籍したチームは小規模だが「常にチャレンジ精神を持って戦っている。チームは温かいムードで、自分の経験を聴き、互いに親密に話し合っている。自分はエンジニアの考えを尊重して、チームが持っている最大のパフォーマンスを発揮できるように頑張っている。誇りを持てるいいチームにいて幸せに思う」と述べた。

同じ米国で活躍し昨年、大リーグのアメリカン・リーグMVPに輝いたエンゼルスの大谷翔平とゴルフのマスターズ大会で優勝した松山英樹の2人に敬意を表し、「大谷選手は日本人という枠を超える活躍でMVPを取り、世界一のプレーヤーになったと思う。松山選手も日本人で初めてマスターズを制覇した。自分も2人と同じ北米で活動しているので、非常に刺激になる。今年も2人のように活躍したい」と誓った。佐藤は17年に日本人として初めてインディ500を制した。その翌年、エンゼルスに招かれ大谷と会い、始球式を務めたことがある。

