実家にいた先月末、アラン・ホワイトの亡くなったことを長男がメールで知らせてきた。死去は日本でも報道され、朝日新聞5月28日付の訃報欄は次のように記した。
 ―アラン・ホワイトさん(英バンド「イエス」ドラマー)26日死去、72歳。バンドの公式サイトなどで公表。死因は明らかにされていない。72年にイエスに加入し、半世紀にわたりバンドを支えたほか、ジョン・レノンの「イマジン」でもドラムをたたいた。―
 初めてホワイト一家に会ったのは30年以上も前のことだ。
 シアトル近郊の住宅街では、初夏の週末はガレージセールが花盛り。そんなセールの一つをアランの妻ジージーの母が催し、近くに住むホワイト一家もそこにいた。立ち寄って品定めとおしゃべりをするうちに、私が日本人と知ってジージーが喜んだ。「アランは日本で公演したの。私たちは日本が大好き」と。バンド「イエス」の名さえ知らなかった私は、ホワイト一家とこうして知り合い、以来、子どもの水泳レッスンや学校で顔を合わせてきた。
 私はアランに助けられたことがある。高校生だった次男が交換プログラムでフランスでの4週間ホームステイに同級生たちと出発した夜、学校からの電話は、明晩フランスから到着する高校生の1人を受け入れてもらえないかとの急なリクエスト。受け入れ先が突然キャンセルとなったらしく、ステイ先で日本語なまりの英語を聞くハメになる少年の失望を思いながらも、放っておけずに了承した。
 ところが、わが家に迎えたその子はイエスのファンだと言い、近くにアランが住んでいると知ると興味津々。電話で事情を話すと、アランは笑顔でわが家へやって来て少年に会い、サインに応じ、一緒に写真に収まった。4週間後、少年は大喜びで帰っていった。
 イエスは2017年、ロックの殿堂入りを果たした。半世紀を超えるイエスの歴史の中でメンバーの出入りは少なくないが、アランの在籍は50年。日本公演参加も、初回から50年記念公演まで10回を数える。
 アラン・ホワイトは、ファンにとり素晴らしいミュージシャンであり、出会う人には心優しい紳士であった。(楠瀬明子)

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