係員から投票の説明を聞く近藤美弥子さん(左手前)と息子のアランさん(同奥)

 22日の公示を受け、参院選の在外投票が23日、世界各地で始まった。ロサンゼルスでは小東京の日米文化会館で7月3日まで実施され、開始日から連日、有権者が訪れ1票を投じている。
 在外投票が開始されて以来、欠かさず投票しているという近藤美弥子さんは、息子のアランさん(24)と在住するアーバインから車で約1時間かけて投票に訪れた。郵便投票を幾度か行ったが、期限に間に合わなかったことがあってから投票所で直接、投票するようになった。将来のインターネット投票の実現に期待を寄せている。
 近藤さんは、日本で争点とされる物価高や安全保障政策、憲法改正などへの関心は無く、「弱者に寄り添い、国民の生活を大切にしてくれる政党を支持してきたので今回も野党を応援している」と信念を貫く。支持する党首の演説を毎日、インターネットで視聴しており、「障がい者に配慮する政策がいい。演説にやじを飛ばす人にもマイクを差し出し意見を聞くので感動する」と話した。日本を変えるには政権交代が必要だとする近藤さんは「米国のような政権交代がしやすい2大政党制にするべき」と意見を述べた。世界の注目が集まる米大統領選よりも日本の選挙に関心があり、母国愛は人一倍強い。「米国市民権を取得して米国人として生きることを考えたが、あえて日本国籍を保持している。日本の政治にかかわって日本をずっと見守りたい」と語り、今後も在外投票権を行使すると話す。ただ、現行では国政選挙にしか参加できないため「(出身地の)神奈川県知事選や横浜市長選にどうして投票できないのだろう」と、悔しい思いを感じている。

投票所の様子。左側の女性は比例代表区のバインダーをめくり候補者の名前を探している岡田陶子さん

 息子のアランさんは、早稲田大学に留学していた18歳の時に選挙権を得て、日本で初めて投票した。米国に帰国後も必ず在外投票を行っている。美弥子さんから日本の政治を学び、母譲りの政治観を持つため支持政党も同じだという。日本生まれのアランさんは、日米二つの母国を持つ。やはり日米関係が気になり、両国の平和を願う。ウクライナで続く戦争について「日本も米国もあまりかかわらない方がいい」と、戦争に巻き込まれることを危惧し、停戦を望んでいる。

 アランさんは米国の選挙でも投票している。日米国民の政治への関心の差を問うと、「米国では意見の食い違いで言い争ってけんか別れになるかもしれないので抑えている」とし、政治的な発言を控える傾向にあると言う。一方、「日本で政治について意見を述べると、関心が薄く『へー、そうなんだ』で終わってしまう」と答えた。在外投票については、在外選挙認証の取得に加え「投票所で書き込む箇所が多く複雑でややこしい。特に比例代表区の候補者選びは、分厚いファイルの中から探さなければならないため戸惑った」と話した。一方の米国の投票は、「政党名と候補者名をマークするだけでよく、簡単。日本のように手書きで記入することはほとんどなく、自分のサインだけでいい」
 ロサンゼルス在住の浦井妙さんは、サンタモニカカレッジで学ぶ長女ナディア美記(21)さんと、ウエストLAカレッジに通う長男のジュリアン黎(れい)さん(19)と投票所を訪れた。母の妙さんは今回で4回目の在外投票のはずだったが、在外選挙認証が失効し、再発行する手続きが間に合わず断念した。在外選挙認証は、日本に長期滞在した際に診療を受けるために住民票を取得し、国民健康保険を利用したため失ってしまったのだという。
 郵便投票を選ばなかったのは、「子どもたち2人に自分の手を使って直接投票し、米国とは違った日本の投票所の雰囲気を味わって1票の重みを感じてもらいたかったから。投票帰りにおいしい日本食を食べるなど、家族のいい思い出もできる」と話した。「簡単な方法で済ませるのではなく、何かを感じてもらいたかった。わざわざここまで足を運んだということで選挙がどれだけ大切かと分かり、日本の政治に参加したということも、これからの生活に変化をもたらすと思う」と期待した。

娘のナディアさん(左)と息子のジュリアンさん(中央)に書類の書き方を教える浦井妙さん(右)

 子どもたち2人には、孤独死やコロナ禍、孤立している社会などの状況に対する日本の政治家の対応や政策などを教え、候補者選びに役立てたという。投票所では投票用紙と送付の封筒に記入する方法が分からず、係員の説明を何度も受けたが、「受け付けの方の対応なども含め、日本を肌で感じることで、日本の政治に関心を持ってもらいたかった。1人の1票は小さいが、心に残るものを得たと思う」と語った。
 初めての在外投票を終えた娘のナディアさんは、米国の投票の簡易さを強調しながら「書き込む箇所が多くて緊張した」と述べた。2度目のジュリアンさんは「久しぶりに漢字を書いたので大変だった。間違いがないか何度も確認した」と話した。
 「候補者はボランティア活動や過去の実績で選んだ」と言うナディアさんは、「日本にも家族が暮らしていて、日本が好きなので、もっと明るい未来にしてくれそうな人に入れた」。ジュリアンさんは「実績に加え見た目も重視した」と言い、「日本のために頑張ってくれそうな人に投票した」と説明した。選挙結果については「とても気になる。自分が選んだ候補者が当選して国会で頑張ってほしい」と、口をそろえた。
 参院選は、7月10日に投開票が行われる。在外投票は7月3日まで。日米文化会館(4階)での受け付けは、午前9時半から午後5時まで。投票には、在外選挙人証とパスポートなどの公的機関発行の顔写真付き身分証明書(有効期限内のもの)の提示が必要。来場の際はマスク(フェイスカバー)の着用が求められている。
 在外公館投票の詳細は、以下のリンクから確認できる。
 www.la.us.emb-japan.go.jp/pdf/20220622_Zaigai_tohyo.pdf
 問い合わせは、日総領事館領事警備班の在外選挙係まで、電話213・617・6700。
 メール—
 zaigaisenkyo@ls.mofa.go.jp

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