
日本の小説が原作の映画にブラッド・ピットが主演すると聞いて、私と同じように心を躍らせた日本人・日系人は多いだろう。ホワイトウォッシュ、ブラック・ライブス・マターの風が吹き荒れる中、どんな作品に仕上がっているかワクワクしながら映画館の座席に着いた。
映画はブラッド・ピット演じる主人公レディバグが東京の街を歩くシーンから始まった。カメラに写る日本語の看板は、以前のハリウッド作品に比べて努力が見られるものだった。それゆえに、「今回はきっと…!」と期待が膨らんだ。
しかし、物語が進むにつれ、自分が持っていた期待が的外れだったと痛感した。そう、本作もまた、2005年の映画「SAYURI(原題 Memoirs of a Geisha)」同様、「架空の」日本を舞台にしたファンタジー映画だったのだ。

ネタバレになるからあまり書かないが、まず新幹線が夜行列車なのはおかしい。また、富士山が米原駅近くで見えるのはあり得ない。
ただ、そこで気付いた。映画で描かれてきたアクション場面だって現実ではあり得ないじゃないか!と。そして、そもそも設定自体が突拍子もなく非現実的ではないか!と…。
ジェットコースターを楽しむようにブレット・トレインのライドをあれこれ重箱の隅をつつかずにエンジョイするしかない。そう決め込んだ途端、この映画の本当の良さに気付き、大団円に向かって新幹線のスピード同様に加速する大がかりなアクションを存分に楽しむことができた。
非現実にリアリティーを持たせることで非現実感が薄まり、観客はその世界観に没入する。そうしたアンカーの役目を本作で果たしたのが、日本が誇るアクション俳優、真田広之だ。欧米の俳優たちがおちゃらけ系なキャラクターを演じ、新星アンドリュー・小路の伸びしろありすぎな演技で場面のクオリティーが軽々しくなってしまう中、真田の演技、せりふの言い回し、剣さばきは本当に素晴らしかった。彼が出るたびに場面が引き締まり、作品のクオリティーが一気に上がった。
レディバグは、自身をとことん不運なヤツだと思っているが、第三者である観客から見れば超絶ラッキーガイ。それは私たち自身にも言える。見方を変えればハッピーな気持ちになれるのだ。そんなワケで、本作の舞台は現実世界の日本ではないという見地に立って、ブレット・トレインの乗車をただただ楽しむことをお勧めする。
ブレット・トレイン ベテランの殺し屋レディバグは、新幹線でブリーフケースを回収する仕事を依頼される。簡単に済むハズが、度重なる偶然によりとんでもない方向に進んでしまい…。原作は伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」で、登場人物のほとんどを外国人に置き換えて映画化した。
各劇場で公開中。
(はせがわいずみ)
我是一个来自中国对于日本与电影的爱好者,非常期待有一天可以在电影院看到这部精彩的影片