【朝倉巨瑞】 年を重ねるほどに資産を貯めていき、その資産を家族に残す人が日本に多いと聞きました。一方で欧米では年を重ねるほど資産が減っていき、亡くなる時にはあまり残っていないという傾向があるそうです。ずいぶんステレオタイプな見解ではありますが、周りを見渡すと案外そうかもしれない、などと思ってしまいます。そしてどちらが良いのだろうかと思った時に、資産は何のためにあるのかという疑問にぶつかります。自分が幸せに暮らすために資産を使い果たすのが良いのか、残された家族が幸せに暮らせるように、資産を家族に残すのが良いのか。
 そんな結論の見つかりそうにないことを思ったのは、長年お世話になったミコ・ヘンソンさんが6月に急逝し、8月にあったお別れ会に出席しながら彼女の生き方を考えていたからでした。ミコさんとは、彼女が主催した映画上映イベントを手伝ったことで知り合いました。ミコさんは常に冷静で、的確な判断をする人でした。そして計算通りに会場を満席にしてみせました。その後、私は多くのことを学ばせてもらったのです。ある時、ミコさんが主催した映画を批評した英語の新聞記事を私に見せて、「プロパガンダだと書かれていたわ」と一言つぶやいて、それ以上の気持ちを外には出しませんでした。
 ミコさんは柏市とトーレンス市の姉妹都市締結を実現し、UCアーバイン校に私費を投じて留学基金を創設しました。日米の懸け橋として行動してきた人物だと知っている人は、彼女がどのような気持ちで映画を上映してきたかを知っています。
 そして今、ミコさんが言っていたことを思い出します。「日本の若者が外国留学を経験することは日本の将来にとって最重要です。私は一主婦なので知恵を絞って考えました。それは全財産を寄付するだけでなく、自分に多額の保険金をかけて死んだら、そのお金が、自分が創設した留学基金に行く。多くの日本の若者の役に立てることを思うと、死ぬのも楽しみになっています」と、本音も冗談も混ざったようなことを言っていたことです。亡くなっても、ミコさんは見知らぬ他人に自分の財産を分け与えています。日米の絆をつなぎ続けているのです。(朝倉巨瑞)

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