K君。喜寿おめでとう。77歳になった雄姿をインスタグラムで見たよ。君の名前と77のナンバーを染め抜いたワールドカップ日本代表のユニフォームを着た君はカッコいいね。
 僕が新聞社のワシントン特派員の時に君は米国の大学に通いながら支局のアシスタントをして助けてくれた。69年11月、ナショナル・モールを埋め尽くした50万人のベトナム反戦デモ集会に寝袋を担いで泊まり込みで取材したね。マリフアナの臭いがぷんぷんする若者たちの中に飛び込んで生の声を聞き回ったね。君の撮った写真と僕の記事は一面トップを飾った。日本人特派員がデモ参加者の現場から発信したのは当時としては画期的だった。二人とも20代だった。
 君は、大学を卒業後、日本に帰り、外資系の金融会社に就職。その後米国の会計簿記会社を買収したのに次いで証券取引法違反で窮地に立ったインターネット関連会社を一時企業買収し、脚光を浴びたね。また人類初の宇宙旅行乗客に申し込み、モハべ砂漠での飛行訓練にも参加していた。60過ぎには大病にかかった。それを契機に田舎の農家を買って改造し、農業を始め、今では自給自足の生活をしている。その村で耕作トラクター・レースやいかだレースを主催したり、村の産物をインターネットで全国販売したり。後ろは振り返らない。常に前を向き、突き進む。
 某医師が言い出した「80歳の壁」とかが日本では認知されているようだ。君もその「壁」まであと3年ある。確かに齢を重ねれば、それなりの生き方が必要だ。十代の時、壮年になった時、高齢者になった時、同じ「自分」だが、それぞれの段階で生き方を変えていく必要がある。
 歳をとると、薬、サプリメント、健康体操などが気になる。それなりにやればいい。病気になったら治療すればいい。死ぬときは何歳でも死ぬ。
 君を見ていて、詩人、萩原朔太郎の言葉を思い出した。
 「幸福人とは、過去の自分の生涯から満足だけを記憶している人であり、不幸人とは嫌だったことばかり記憶している人である」
 まさに君は幸福人だ。君に乾杯!(高濱 賛)

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