まばたきをする間に正月が過ぎ、立春を目の前にして急に寒波が訪れ、各地で大雪や氷結の被害が出ている。
自然は必ずしもカレンダーに忠実というわけではないが、ここ4~5日は、5時に仕事を終えて職場を出ると、寒さは厳しいものの、まだ少し空に明るさが残っているのを見つけ、ああ日脚が伸びたなと単純にうれしくなる。うれしくなるが気分の大部分を占めているのは、重く不自由な左腕、そこで再び左腕骨折の話。
10日前にやっと重いキャストを外してもらい、さあ自由になったと思ったのは浅はかのひと言。7週間しっかり固定されていた左腕は、キャストを外した瞬間はなんともしょぼくれた形をしていたのに、家に帰り着く頃にはその反動か手の甲などが腫れあがって、5本の指は紙1枚持ち上げられない役立たずになっていた。
リハビリの必要性はドクターや骨折経験者からよくよく聞かされていたし、自分でも理解していたつもりだが、持ち主の意思を無視し、思い通りにならない手に、いささか気分が悪い。
早速予約を取り、計12回のセラピーを受け始めたが、まず「指をしっかり曲げてこぶしをつくり、それをゆっくりと伸ばす」この簡単なことが簡単にはできない。タオルの上に思いっきり指を広げてタオルをわしづかみにする、これだって痛み無くしてはできない。
ジッパーの上げ下ろし、チャイルドプルーフのついた薬瓶はもちろん、ペットボトルのふたさえ片手だけでは開けられない。利き腕の右手右腕がこなしていた多くの仕事も、左手の支えがあればこそで、今更によき相棒である左手のありがたさを身をもって教えられている。
日常茶飯事に意識もせずにしていた数々の指や手の動き。それらを難なくこなしていた両手のチームワークと、見事なメカニズムに脱帽である。
隣のテーブルで同じようにセラピーを受けている先輩(?)のスムーズな動きを横目で見ながら、「いずれ私も」と自分を励ましてがんばっているが、左手の復活を一番喜ぶのは、たぶん孤軍奮闘頑張り過ぎて腱鞘炎(けんしょうえん)まで起こした右手ではないだろうか。(川口加代子)