第5回大会を迎えたWBCは、佳境に入り21日午後4時(太平洋時間)プレーボールの決勝戦を残すのみとなった。「野球の世界一」を決める大会は、国の威信を懸けて戦う選手が懸命のプレーを見せ野球ファンを沸かせている。
 われら日本代表は、2021年の東京五輪で金メダルに輝くなど、世界ランキング1位に君臨し、今大会も優勝候補に挙げられ順当に勝ち上がり、決戦の地マイアミに乗り込んだ。メンバーは、少年時代にWBCの第1回と第2回の大会を優勝に導いたイチローに憧れた若い世代が活躍している。今大会でリーダー役のダルビッシュ、そして大谷、佐々木の勇姿に刺激を受け、後を追う選手が出てくるのが楽しみでしょうがない。
 日本が誇る大谷なくしては、今大会を語れない。大リーグの所属チームでの役割をこなした後に遅れて帰国し、代表チームに合流した。チャーターしたプライベートジェットから颯爽(さっそう)と空港に降り立った姿はスーパースターらしくかっこよかったが、偉ぶった態度を一切見せないのが大谷の魅力でもある。
 全体練習から球場外まで、大谷の一挙手一投足に注目が集まった。本番でも期待通りの活躍を見せてくれ、1次リーグではB組のMVPに選ばれた。唯一無二の「投打の二刀流」は今年も健在で、「投手兼3番DH」で快投を演じ、さらに特大のホームランで驚かせるなど、千両役者ぶりを思う存分に発揮している。
 2試合投げたため、投手ではてっきり「お役御免」と思われたが、準決勝を前に「もちろん中継ぎでいく準備はしたい」と発言。リリーフ登板に意欲を示す優勝への執念に敬服する。だが、そうなるとブルペンで肩を作る必要があり、登板前の回に打席が回ると、投球練習はできない。どうやって二役をこなすか、見たい気持ちの半面、心配もする。
 このコラムが掲載される21日には、午後の決勝の相手は決まっている。20日夜の準決勝で日本がメキシコを破り、日米決戦となればうれしい。日本がリードした九回に大谷が抑えで登板し、最後の打者を三振に打ち取って試合を締めくくる。千両役者なら夢ではない。(永田 潤)

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