妻のおいから新聞の切り抜きが届いた。記事は青森・平川市の温泉ホテル「アップルランド」に関するもの。私たちはこのホテルに2度泊まったことがある。
 記事は、このホテルが、リクルート「じゃらんアワード2022」(東北ブロック)接客・サービス51~100室部門の第1位を獲得したと報じていた。私たちが泊まった時の、従業員のサービスを思い出す。
 別館の3階屋上にある大観音像を見たいと客室清掃中の女性従業員に聞くと、「私がご案内します。エレベーターで1階へ降りてください」と、自分は3階から階段で1階へ駆け降り、別館の大観音に通じるエレベーターまで案内してくれた。従業員は普段エレベーターを使わないしつけなのか。また、フロントにカミソリの購入場所を問い合わせると、フロント横に無料のサービス品としてクリーム類と共に置いてあるが、「お部屋までお届けします」と、3階まで持ってきた。感謝と奉仕の従業員教育が行き届いている。宿泊感想アンケートにスペースいっぱいの賛辞を記した。
 昨年5月に副社長から4代目社長に就任した経営者のK氏は、「コロナ禍以後、非接触のためサービスを簡略化させるのが業界の主流だったが、感染対策を強化しながら喜ばれるおもてなしをしようと考えた」。逆境を逆手に取って奏功したが「コロナがなければ受賞はなかった」と言い切る。
 祖父は青森リンゴの移出商で、知名度向上と消費拡大の功績で県りんご勲章を受賞した。1972年「寒い中で頑張って働いてくれる人たちのために」と温泉を掘り当て旅館業を始めた。創業50周年。ホテル屋上には16メートルの「りんご大観音」、りんご100個以上を浮かべた「瓢果の湯」、星空を眺める野天風呂「満天の湯」、りんごの木が囲む広い駐車場の一角には小型の「ねぷた小屋」など。
 春は弘前公園の桜、初夏は岩木山から津軽平野に吹き渡るさわやかな青田風、秋は赤いりんご畑と紅葉。冬も、雪を求める台湾など南方のインバウンド客でにぎわうという。
 「このユニークな温泉ホテルは88人の地元従業員の人生を預かっている。祖父同様に感謝の気持ちを持ち続けて100年企業を目指したい」という信念とユニークなおもてなしで、内外の宿泊客を引きつけている。(若尾龍彦)

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