今年の夏休みこそは飛行機に乗ってどこかに行きたい。懐かしいロサンゼルスやサンディエゴか、それともデザインとアートの世界を求めて北欧諸国か。悩ましいのはこの円安と物価の上昇、そしてロシア上空を迂回する飛行ルートの変更…。
 ちょっと思考を変えて違うところにするとしたらどこだろう。おいしいものが食べられて、気分転換になって、人々や社会の躍動感も感じることができるところ。そう考えて思いついたのは、台湾と韓国。どちらもニュースでは身近でも10年以上足を運んでいない。
 台湾にはUSC時代の友達がたくさんいる。料理はおいしいし、何よりも看板やメニューが漢字だから、何の店でどんな料理が出てくるかだいたい分かって安心できる。昔、日本人がつくった温泉もあるし、大好きな民族博物館もある。
 もう一つの候補の韓国。この3年間、韓国ドラマと映画には随分とお世話になった。世界で認められる映像作品や音楽をたくさん世に出すようになったこの国の変化を感じてみたい。人気の韓国コスメや美容にも挑戦してみようか。定番のソウルもいいけれど、福岡から船に乗って釜山に上陸するのもいいかもしれない。
 これらの地域はこれまでは気軽に出かけられるところだったと思う。日本から近いという距離的なものもあるけれど、海外にいるという緊張感をそれほど持たなくてもいられた心理的な安心感も大きかったように思う。
 いまは昔のような気軽な旅ができるかといったらそうではない。韓国の隣国は今年に入って20発近いミサイルを発射している。台湾と海峡を隔てた大国は「一つの中国」をうたって軍事的な圧力を強めている。先日台北で市民を巻き込んだ防空訓練のニュースがあった。市民が地下鉄の駅に避難し、中心街から人も車も消えた映像を見て、これが日本の近くで起きていることなのかと目を疑った。
 夏休みは9月に取る予定。そろそろ行き先を決めないといけない。ガイドブックを見ながらホテルやレストランを選ぶのは楽しいけれど、今回はそれに加えてニュースで情勢をつかんでから旅に出ることが必要になりそうだ。(中西奈緒)

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