職場の社会福祉団体の、今年最後のファンドレイジングが近づいてきたある日、「元気にしてる?」と聞き覚えのある声の電話がかかってきた。名乗ってもらわなくても分かる2世のMさんだ。
「今年はクリスマスのイベントやるんでしょう?クッキー焼くからね」
ボランティアをお願いするまでもなく自分から申し出てくれる。こちらも横着を決め込んで(?)彼女からの電話を楽しみに待っている。
私が知っているだけでも25年以上、私の職場だけでなく、他のコミュニティーの催しにも、彼女のクッキーが登場している。年季が入っているからおいしくてすぐに売り切れてしまう。今回も6種類ほど焼くと言う。彼女の年齢も考慮して、「2種類くらいでもいいですよ」などと言おうものなら「2種類なんて面倒な。同じ焼くんだから任せておきなさい。グローサリーの買い物以外は家にいるから、何かやってないとボケるからね」と元気がよい。
家にいるからとは言うが、今も所有する3ユニットのアパートの管理をしており、冷暖房の調節や階段の掃除、冬は雪かきもする。息子さんたちがやめるように言うのだが、「人任せにしていては、いつになるやら、できるうちは自分でするわ。何か起これば年寄りが子どもの言うことを聞かないからと叱られるけれど、頭も体も使わなければダメになるよ。ちょっとしたことで、いちいち息子を煩わしたくないのよ。あなたも1人で住んでいるのだから分かるでしょう」と同意を求められる。
「しかしMさん、私はまだ81歳だけど…、あなたは確か…」
「そうよ、私は99歳になったよ。来年も生きていたらクッキー焼いてあげるよ。体を動かすことは少しも気にならない。17歳で、キャンプを出て、シカゴに来てからずっと働いてきたもの。あなたも頑張りなさいよ」
「はーい」
ついうっかり小学生みたいな返事をしてしまった。Mさんにかかると81歳が子ども扱いされても仕方がない。来年はぜひ100歳のMさんが焼いたクッキーを食べたいものだ。そして彼女の17歳の頃の話も聞いてみたい。(川口加代子)
