「スポイラーアラート!」
 ネタバレのため、冒頭で警告する。マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の同名原作本に基づく話題作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を鑑賞した。
 舞台は1920年、オクラホマ州のオセージ先住民族コミュニティーで石油が発掘され、利権によって一気に裕福になる。外部から出稼ぎ労働者が押し寄せると、オセージ族たちの不審死が次々起こる…。映像と音楽はサスペンス調が漂い、終始緊張感を保つ犯罪恋愛悲劇。
 見終えた際の率直な気持ちは、ウクライナや中東で勃発中の戦争と重なり、恐怖感、虚脱感に襲われ、悲しくつらくなった。人間不信も募る。裏切りとうそまみれの虚像で生きる貪欲で醜く愚かな人間たち。更生・救済の余地なし。結局、人間は悪魔が宿り「情けない」と悟らせる作品なのか…?
 王様的存在、表向きは温厚でフレンドリーだが、内面は腐敗した極悪役のロバート・デニーロはさすがだ。自己利得のためなら誰をも不動に操る冷酷な憎き役を淡々と見事に演じた。
 素直だが優柔不断、単純で間抜けな帰還兵・おい役のディカプリオも目が離せない。精悍(せいかん)な目だが、葛藤、困惑、微妙な哀れな表情は圧巻だ。
 口数少ないが頑固な妻モーリー役のリリー・グラッドストーンが自然体で光る。疎外感、孤独感、絶望感、家族への責任感を背負い、夫との複雑な愛を信じ…沈黙し…疑い…堪える苦悩と悲哀がリアルに伝わる。この2人の真の愛が救いになると期待したが…報いはない。
 エンディングに迫り、100年間余り封印された米国汚点の歴史を暴き、人権復権を強く訴える監督のサプライズ登場も。今回のテーマだ。
 長さ約3時間半。前半は同じ場所で会話中心、抑揚なく展開するのでスロー。さすがに少し長過ぎる。
 制作費2億ドル、日本円(1ドル=150円)で300億円。エグゼクティブ・プロデューサーも務めたディカプリオのギャラは4千万ドル(60億円)。パラマウント・スタジオとアップルTV+がスポンサー。劇場公開後に独占的に配信予定。貴重な大作であることは確かだ。(長土居政史)

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