
小東京の都ホテルの外壁で制作中のドジャース・大谷翔平選手の壁画が完成に近づいている。地元開幕戦前日の27日午前11時から、1街を封鎖して除幕式が開かれ一般に公開される。作者のロバート・バーガスさんが地元ロサンゼルス、ドジャース、日系社会、そして日米をつなぐ願いを込めて制作する作品「LA Rising」について思いを語る。

バーガスさんは創作活動で日本の各所を旅したことがある親日家。壁画設置の場に小東京を選んだ理由について「ボイルハイツで生まれ育った私にとってダウンタウンにある小東京は地元なので、ここで私が大好きな大谷選手の母国日本と米国をつなぐ作品を作りたかった。壁画を見てもらう場所として、小東京なら野球ファンや日系コミュニティー、そして日本の人々にも喜んでもらえる。小東京はこの壁画に最も適した場所だと思う。他の場所を考えることはできなかった。異なる二つの国の文化を紹介し、日米の橋渡しができることを誇りに思う」と語る。そして「ロサンゼルスの町全体とドジャースの団結を表したかった。作品を鑑賞することで団結を感じてほしい」と願う。
投打の二刀流と富士山をデザインした理由は「大谷選手は投手と打者のスーパースターを1人で2役務めている特異な選手なので、自然に思いついた。富士山は世界遺産であり頂上には美しい雪が見られる日本のシンボルなので取り入れた」と語る。「富士山は北斎の浮世絵のように繊細で神秘的に描く」と言う。
壁画を思いついたのは昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が優勝した瞬間だったという。日米決戦となった九回裏に大谷選手がマウンドに上がり、2死で当時エンゼルスの二枚看板のトラウト選手と一騎打ちとなった。大谷選手がトラウト選手を空振り三振に打ち取り、歓喜したと言い、「歴史的な名勝負だった。それ以来、大谷選手とコラボレーションした作品を作りたい思ってきた」と、創作意欲が湧き上がったことを振り返る。

昨シーズン終了後に大谷選手はフリーエージェントとなったが「エンゼルスに残留しようと、遠く離れた他のどこかの球団に移籍しようと、小東京の都ホテルの壁をキャンバスに大谷選手を描きたいと願っていた」と語り、ホテルを所有する近鉄エンタープライズ・カンパニー・オブ・アメリカ(KEA)と交渉を重ねた。「小さい頃からドジャーファンだったので、ドジャースのユニホームを着た大谷選手を描くことができてとてもうれしい」と笑顔で話す。
KEAの南浦彰社長はバーガスさんについて、「ボイルハイツから1街の橋を渡って小東京に来る時に、ダウンタウンの摩天楼が見える。バーガスさんはその中にあるわれわれのホテルの壁を見て、ミューラリスト(壁画家)として創作意欲をかき立てられたのだろう。日本と日本文化に造詣が深く、また小東京と日系コミュニティーを愛しているので、適材である」と歓迎する。バーガスさんの熱意に、高さ150フィート、幅60フィートの外壁をキャンバスとして提供した。壁画効果で小東京に集客が見込めることについては、「まずは大谷選手の活躍により日本と米国の結びつきが強くなることを願いたい。その結果として小東京に経済効果がもたらされ、われわれのホテルビジネスが恩恵を受ければいいと思っている」と語る。

バーガスさんは今月8日から制作に取りかかり、屋上からつるしたゴンドラに乗って毎日午前7時半から午後4時半まで一心不乱に作業をこなしている。「壁の表面は平坦ではなく、岩のようにゴツゴツしているので、ペイントするのがとても難しい。スプレーを使うことができず、全て筆で描くので時間がかかるが、挑戦のしがいがある。大谷選手の顔は表情を忠実に描くために特に気を配り、時間をかけた。描いていると翔平からパワーをもらった感じがする。大谷選手に誇りを持っているファンも、私の作品からパワーを受け取ってほしい」
バーガスさんは肖像画を得意とするアーティストで、壁画の作品は米国のみならず欧州各国の都市でも見ることができる。バーガスさんにとってパブリックアートの魅力は鑑賞する人がアートギャラリーや美術館を訪れなくても、通りを歩いているだけで誰もが作品を目にできることにある。「非常に多くの人々が私の作品を見る。それが私が壁画を描く理由だ。立ち止まって見てもらえることがとてもうれしい」と、アーティスト冥利に尽きることを強調する。
大谷選手の壁画は自身の作品の中で2番目の大きさになるという。最大の作品はLAダウンタウンのヒル通りと5街の角にある15階建のアパートで現在取り掛かっている壁画で、こちらのプロジェクトは大谷選手の壁画をドジャースの地元開幕戦に間に合わせるためにいったん中断している。いずれ制作を再開し、年内に仕上げる予定だ。6万平方フィートの作品で、完成すれば世界最大の壁画としてギネス記録の更新に期待がかかっているという。
「来週27日に大谷選手の壁画の作品を披露するのがとても楽しみ。除幕式は誰でも参加できるので、来てくれる人々全員を歓迎したい」と来場を呼びかけている。壁画は除幕の瞬間まで大型の幕で覆われ、ロサンゼルス市とドジャース関係者を招いた式典で完成を祝い、お披露目される。(永田潤、写真も)

