
3月になり、プラムの枝に白い花がポツポツ咲き始めました。小さな若葉もあちらこちらに開いてきました。まだ添え木を付けた若い木ですが、昨年は実を20個ほど付けてくれました。萌え出ずるものの、なんとけなげなことよ、としみじみ見上げていますと、若葉に7ミリほどの小さなカタツムリがくっついていて、葉先には食べられた跡があります。あちらの若葉も、こちらの若葉も。
あらま、カタツムリって木登りするんだっけ? その小さな体で、水気のない樹皮のでこぼこを伝って、地上数メートル、あるものはてっぺんまで這い上がっているとは。これまたけなげとも言えますが、木が若いだけに、なおさら放ってはおけません。木登りは禁止といたします。
フム、と考え、私はとっておきのカタツムリ追い払い方法を思い出しました。言っておきますが、これは駆除ではなく、あくまで追い払う方法です。
その昔、当時私が働いていた職場のチーフで、オクラホマ育ちのルースおばさんが教えてくれたのです。その方法は、卵の殻をオーブンの予熱でカラカラに乾燥させて、細かく砕いて植物の根元にまく、というものです。「へ〜え、つまりカタツムリは卵のニオイがキライとか?」と私。「そうじゃないの、地面に卵の殻がまいてあると、その上を這ったらカタツムリのおなかはチクチクして痛いわけよ。イヤがって入らないのよ」。ルースおばさんはしごく当たり前に言いました。
私は「プッ」と笑ってしまいました。なにかマンガみたいです。でも好きです、こういう牧歌的な暮らしの知恵。私はオクラホマが好きになりました。
あれから25、26年たって、カタツムリチクチク話しを忘れることはなく、また実際に試したこともなく、今日に至っておりました。が、ついに、試す時がやってまいりました。
まずは、連日の卵料理を夫に強いりまして、30個分ほどの殻を用意。今回は自然乾燥させて、細かく砕き、チクチク具合を頬で試し、それをプラムの根元ぐるりに敷き詰めました。
カタツムリが自然に表れるのなんか待ってられないので、アイビーの茂みから3匹ほど探してきて卵の殻と土の境界線あたりに配置しての観察です。
果たして結果は、カタツムリは卵の殻にペトッと触れたあたりでモゾモゾしていましたが、ゆっくり進行方向を変え殻のエリアから逃避を始めたのです。おかしかったのはその逃走経路に小さな殻が点々と残っていたこと。したがって粘膜にくっついた殻は動いているうちに取れるのだと、安堵もした次第です。
日常ではこんな優し気なこと言っているほどカタツムリ被害はのんきなものではありませんが、このたびは木登りカタツムリということで、面白がってみたのでありました。
ちなみに、ネットで卵の殻の活用法を検索してみますと、「害虫除け」というのもありました。記述によれば、殻のギザギザしたエッジはナメクジやヨトウムシにとっては大きな壁として立ちはだかります、とのこと。「そうか、あるんだ」、と思ったものの、それほど面白いとは感じませんでした。もし25年ほど前にこの文章を見たとして、果たして記憶に残っていただろうか、と考えてしまいました。やっぱり話し言葉で教えてもらったことって、そのことだけじゃなく、背景やら新たなつながりやら、副産物を生んでますよね。私はそのあたりで暮らしを楽しませてもらっている気がします。
今月のセントパトリックデーには、年に1度のコーンビーフ&キャベツを作ります。作り方はルースおばさんが教えてくれました。夫の好物なので、それから毎年作っているんです。ルースの旧姓はケネディ。なんかカッコよくありませんか。
